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ラスト・チャイルド/The Last Child (ねこ3.7匹)

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ジョン・ハート著。東野さやか訳。ハヤカワ文庫。

 

少年ジョニーの人生はある事件を境に一変した。優しい両親と瓜二つのふたごの妹アリッサと平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。事件後まもなく父が謎の失踪を遂げ、母は薬物に溺れるように…。少年の家族は完全に崩壊した。だが彼はくじけない。家族の再生をただひたすら信じ、親友と共に妹の行方を探し続ける―早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。英国推理作家協会賞受賞。(裏表紙引用)

 


ジョン・ハート2冊目~。

 

う~ん、評価の難しい作品。と言うのも、上下巻約700ページの物語の前半からラスト100ページ程までが冗長すぎて仕方なかったから。風景描写や日常のくだりがやたら多く、え、ここからこのページまでの内容必要?と疑問を抱くことも多々。どんだけ途中でやめようかと思ったか知れないが、ラストが怒涛の面白さだという評判を信じて頑張った。訳は読みやすいが、キングやディーヴァーと同じような文章表現が凄く気になった。

 

と、いきなりネガティヴな感想を洩らしてしまったが、結果的には良作。双子の妹が誘拐され、父は失踪し、母は「連れ子をいたぶる典型的な継父」を絵に描いたような金持ち男と交際しているという、不幸に不幸を掛け合わせたような少年ジョニーが主人公。妹の行方を探すために親友と共に行動するジョニー。様々なトラブルに巻き込まれつつも、少年の機転や周りの協力で邁進していく。

 

この物語の特徴はミステリーよりも人間ドラマで、事件を担当する刑事のハントの物語も重要だ。手のかかる息子を抱え、ジョニーとその母親を想い、自身の葛藤と向き合っていく。

 

ラスト約100ページの読み応えも語らないわけにいかない。ネタは割れないが、意外すぎる犯人と事件の悲しさむなしさ、そして人間というものの複雑さ、その情感は今までのダラダラした展開を全てなかったことにしてもいいほど感動的だ。

 

少し捜査に疑問を感じる点はあるし、宗教というものを身近に感じていなければ入り込みづらいのだが――。まあ読んだ甲斐はあった。