すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

大きな音が聞こえるか  (ねこ3.8匹)

イメージ 1

坂木司著。角川文庫。

 

退屈な毎日を持て余す高1の泳。サーフィンをしている瞬間だけは、全てを忘れられる気がした。そんなある日、泳は“終わらない波”ポロロッカの存在を知る。「この波に乗ってみたい―」。こみ上げる想いに、泳はアマゾン行きを決意する。アルバイトや両親の説得を経て、退屈な日常が動き出す。降り立った異国が出会ったのは、様々な価値観と強烈な個性を持った人々。泳はもがきながらも、少しずつ成長していき…。(裏表紙引用)

 


坂木さんの文庫新刊は、なんと700ページ越えの大長編。こんなに坂木さんの物語を読み続けられるなんてしあわせ~(*n´ω`n*)と思いながら読了。読みやすいし面白いので苦痛はなかったな。物理的にはキツかったけど(笑)。ゴワゴワするからカバー外して読んだ。

 

と、いうことで。本書は高校生男子の成長物語ということで。今までもお仕事系でそういうジャンルは坂木作品にあったけれど、今回はなんとポロロッカに乗るため1人でアマゾンに行ってしまうというなかなか凄い内容。ポロロッカというのは海嘯のことで、海が逆流して波が河をさかのぼる現象のこと、だそう。お金に苦労したこともなく、受験の苦労もない泳はサーフィン少年。友だちもいるし趣味もあるけれど、なんだか毎日が退屈。このまま腐りたくない!と悶々していたら、いつも海で会う〈仙人〉に「終わらない波」があることを教わり、気になって調べるうちにポロロッカに乗りたくて仕方がなくなってしまう。そこへ親戚のお兄さんが、仕事でアマゾンにいるというではありませんか。という流れ。

 

ここで親に頼らず、アルバイトをしてお金を貯めるというのがいいな。引越し屋でも中華料理屋でも、泳にとっては教わる事ばかりで、恥もかくけれど学びもする。出会いって素晴らしいな。ほんと、旅もだけど仕事って子どもを成長させると思う。親やクラスメート以外の様々な年齢、世界の人間と関わるって大事なこと。

 

そんなわけで、泳がアマゾンへ行くまでにも400ページ以上費やすのだけど。ブラジルでホームステイさせてもらった家庭でもまた色々あるわけで。人は殺されるし泳はついに男になるしね(ヒヒヒ^^)。坂木さんがこういうシーンを描くことには抵抗あったけど^^;なんというか、坂木作品って健全なところがいいなと思っていて。でも、この年代の男子が性的なことを考えないわけはないので、リアルで良かったとは思うが。

 

アマゾンで一緒した皆もみーんなキャラが良かったなー。いい人多すぎだろとも思うが、まあ坂木さんだから^^;日本に帰ってきた泳が、変に勘違いしていないのも良かった。なんというか、非日常だって日常があるから輝けるわけだもの。普段の親や友人との会話の中にも、アルバイトの中にも、買い物をした店員とのやり取りの中にも大切なものはある。きちんと人と向き合おうと思ったら、家族への声掛けだってメールの書き出しだってブログのコメントの返し方だって少しは頭を使う。退屈してるヒマなんてないよ。