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犯罪は王侯の楽しみ/Le Fait du Prince (ねこ3.8匹)

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社会的地位も財産も美しい妻も手に入れ、満ち足りた生活を送っていた男が、それだけでは飽きたらず、途方もない計画を立てた。航空ショーの売上金という足のつかない大金を運ぶ輸送車を襲うというのだ。ロンドン警視庁への挑戦!警察重鎮の娘を人質に取り、輸送ルートを調べ上げ、すべては抜かりなく実行されたはずだったが…。犯罪の愉楽が彼と妻にもたらしたものは…?! (裏表紙引用)

 


創元推理文庫の復刊フェアの中の一品。カトリーヌ・アルレーと言えば代表的なものは「わらの女」だが、実は10代後半の頃ハマっていた作家である。「二千万ドルと鰯一匹」「アラーム!」「白墨の男」など、古本市を廻って必死で集めたものだ。読破は出来なかったが、当時は古本ならば割と簡単に見つけることが出来た作家。今では見る影もない…と思っていたら今回の復刊。

 

アルレーはフランス・ノワールと呼ばれる作風で、主に悪女ものを得意としている。美しい女が富豪などを巧みに騙し、物を盗んだり身分を手に入れたり。サスペンスフルなジェットコースター・ノベルなのだ。だが、今回久々に読んだこの作品はちょっと趣が違う模様。犯罪者側の人間から描いたものなのは同じだが、本書では王侯の血族を身内に持つ大会社の社長の「お遊び」がストーリーの軸だ。その社長が警視庁犯罪捜査局長の男の溺愛する娘を誘拐し、共犯者である妻は自殺志願者を新聞募集する。一体なんの目的で?そしてその犯罪はどのように進行していくのか。

 

内容はどう読みすすめても「貴族の遊び」で、何がしたいんだかさっぱりわからない。自殺志願者とか何に利用するのかいつまでもわからないし。この夫婦の犯罪が明かされ、最後には痛い目に遭う、という流れを予想していただけに、ラストのオチには開いた口がふさがらない。ザマミロと言っていいのか^^;、それ見たことかと言えばいいのか。つくづくお貴族さまは何を考えているのか最後までわからなかった。スカっとするというより哀れだったな。