わたしの仲間たちの中心的存在ともいえた友人が死んだ。病死なのか、それとも事故か殺人か。やがて、検死とともに審問が行われ、被害者の意外な素顔が明らかとなり、同時に関係者たちも複雑な仮面をかぶっていたことを知るに及び、わたしはとびきり苦い真相に至るのだが…。読者への挑戦状を付した、ひねりの利いた本格ミステリ。(紹介文引用)
ヴィンテージ・ミステリシリーズ、バークリーの最新訳本。ロジャー・シェリンガムシリーズではないのね。比較的バークリーの中では読みやすく(元が読みにくい作家ではないが)、さらさらと読めた。登場人物も少なく、人間関係もシンプル。ただ、内面に巣くう闇やドロっとしたものをきっちり描いているのはいつも通り。
本書は砒素を扱った事件(なのか自殺なのか)ということで、「砒素」を深く掘り下げている・・・のかもしれない。砒素はどこから来るのかとか成分がどうたらこうたら。中盤は裁判シーン中心で、リーガルミステリふう。相変わらず一風変わっていて面白いが、地味かも。と、思いきや、本作の見所はラストシーンにあった。たぶん、ここが描きたかっただけなんだろう。他にない、アンチミステリスト(そんな言葉があるかはわからんが)のバークリーはやはり二度同じことは繰り返さなかった。最後に唖然とするミステリとしては今後真っ先に名前が浮かぶ作品になったかもしれない。