すべてが猫になる

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ナミヤ雑貨店の奇蹟  (ねこ3.5匹)

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東野圭吾著。角川文庫。

 

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!? (裏表紙引用)

 


東野さんのSFファンタジー。連作短篇集のようであり、時空とお話が繋がっていく長編のようでもあり。第一章に登場する泥棒3人が偶然飛び込んだ雑貨店に舞い込む不思議な悩み相談の手紙に返事を書く、という一風変わった、でもどこか既視感のあるストーリー。東野さん、久々にナメてんのかと思うほどの(すまそ^^;)小手先で描きました的平々凡々展開に唖然。が、第二章からの展開で姿勢を正した。先に言った連作短編のように、この3人がまた別の手紙を受け取り、そして――という流れかと思いきや、章ごとに時代が変わり登場人物の歴史が語られながら、ナミヤ雑貨店を取り巻く運命の繋がりが明らかとなっていく。小手先という印象は拭えないが、だからこそ東野さんのこういうところが素晴らしいと思う。パっと思いついてパっとこういう作品をまとまった形で描ける作家は他になかなかいない。(苦節20年の力作だったらすいません)

 

総合するといい人ばかりのいいお話ばかりで、ジャンル的にも好みではないのだが完成度は高いし評判の良さも頷ける。まあどんな事情があろうとまともな人は泥棒をして人を椅子に縛ったりしないし、未来にいるんだから予言出来て当たり前だろう的な反感も少しはあったので私の評価はこれぐらいで。