すべてが猫になる

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夜の国のクーパー  (ねこ3.8匹)

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目を覚ますと見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すものだから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」猫は摩訶不思議な物語を語り始める―これは猫と戦争、そして世界の秘密についてのおはなし。(裏表紙引用)

 

 

伊坂さんの文庫新刊。結構長かったね、読むのに苦労した。今回はザ・ファンタジーといった作風で、猫と話す人間や樹の妖精のようなものや、透明になる兵士や、荒唐無稽なものがずらり。最近、偶然にもファンタジーが続くのでちょっとしんどい^^;ファンタジー苦手なんだよね。。。まあ、伊坂作品なんてどれもファンタジーみたいなもんだと思って読んでいるけど。

 

妻に浮気をされたある男が旅に出かけ、気が付くと猫に蔓で全身を縛られていたところから物語は始まる。なんと、その猫(トム君)と彼は話が出来てしまうという。そして、トム君の住む国では戦争に負けたばかりで、隣国(鉄国)に支配されているという話を延々と聞かされるという。トム君の視点で語られる、国で起こったことのすべて。それと猫対鼠の力関係や、樹から出現するクーパーにまで話は及び、早大な世界を描き出している。ただ、設定の摩訶不思議さを除けば、戦争に勝った国と負けた国のよくある物語ではある。

 

正直言って伊坂作品としては少々退屈なお話ではあったのだが(長いしね)、終盤の逆転劇と縛られた男の謎が明かされるくだりのカタルシスはさすがと言える。それがなかったら評価はかなりやばかった。最後の最後に物語の姿が一変する、その興奮を味わえただけでも良かった。