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虹の歯ブラシ 上木らいち発散  (ねこ4匹)

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早坂吝著。講談社ノベルス

 

上木らいちは様々な客と援交している高校生で、名探偵でもある。殺人現場に残された12枚の遺体のカラーコピー、密室内で腕を切断され殺された教祖、隣人のストーカーによる盲点をつく手口―数々の難事件を自由奔放に解決するらいち。その驚くべき秘密が明かされる時、本格ミステリはまた新たな扉を開く!さらに過激で、さらに斬新な傑作誕生!!「奇才」による待望のメフィスト賞受賞第1作! (裏表紙引用)

 


「○○○○○○○○殺人事件」で、一発屋か実力派か物議を醸した(かもしれない)早坂吝さん、早くも2作目。なんということでしょう、前作を凌ぐ傑作の誕生。こういう作品を手放しで褒めるのは恥ずかしいが、表面的なエロ、お笑いという作風に埋もれ「メフィスト賞(笑)」で片付けられてはミステリマニアとして名がすたる。堂々と評価させていただく。

 

本作は、前作で探偵役として活躍した上木らいちちゃんを完全なる主人公に据えた短編集。すべての章を「虹の色」で統一したタイトルにしており、らいちの援交ストーリーと絡めた推理劇にしている。この推理が一見おふざけの域で留まっているように見せて、驚くほど論理的かつ正統派なのだ。こだわりすぎじゃね?と思うほど、ミステリとしての瑕疵がないことをアピールしてみせるのはご愛嬌だが、それが逆に自分で穴を探すのがめんどくさい読者に打ってつけではなかろうか。

 

まあ、正直言ってラスト2編は蛇足だし構成美も何もありゃしないしあくまでB級作家としての立ち位置だとは承知しているが。すらすらと読みやすく、手練な印象さえ受ける。下ネタと言っても当のらいちはキュートだし、倫理的にどうかと言われたら返す言葉もないが、まあ「こういうもの」を受け入れられる読者ならば試してみるのも一興ではないだろうか。私はこの作家さん、2作ですっかりファンになってしまった。