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龍は眠る  (ねこ3.9匹)

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嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ……宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。(裏表紙引用)

 

 

宮部みゆきの初期人気作品はほぼ読破したと思っていたが、これが残っていたらしい。beckさんにオススメ頂いたので早速読んでみたが、600ページ強の大長編が短く感じられるほど読ませる作品だった。

 

内容は、ある雑誌記者の男(高坂)が嵐の夜に一人の少年に出会うところから始まる。自転車をパンクさせたという少年を乗せて走り出した車は、何かをはね上げたような衝撃を受けた。高坂が戻ってみると、マンホールの蓋が開いており、近くには子供用の黄色い傘が――。子どもがマンホールに落ちたのかもしれない!慌てる高坂に、少年(慎司)は自分が人の心が読める超能力者であることを告げる、というもの。

 

正直言うと、それほど大きな事件は起こらないのだ。もちろんマンホールの死亡事故は重大だが、後半は高坂に関わる誘拐事件が起きたりと、物語のメインストーリーはそこにはなっていない。どちらかと言うと、超能力者の苦悩や本当に彼がサイキックなのかという謎のところへ焦点が集まっている感がある。なのでどこへ物語が収束するのか最後まで分からず、飽きさせない読書となったのだが――。サイキックであることの苦しみ、ミステリーとしての完成度、どちらも出来が偏っていないのが素晴らしい。

 

心を読めるというと羨ましい部分もあるが、よく考えるとこれほど辛い能力はないのではないか。可愛い女性や尊敬する上司などが、妬みそねみの感情を根底に持っていたり、ちょっと性的なことをチラっと思っただけでも通じてしまうなんて、イヤすぎる。知るほうもイヤでしょ、これ( ̄▽ ̄;。差はあれ、どんな人でも24時間清純潔白でいられるわけないもんね。

 

と、話はそれたが。ちょっと主人公に魅力がなかったのが残念だが(モテるんだけどね)やっぱり宮部さんはいいな。次なに読もう。