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演じられた白い夜  (ねこ3.5匹)

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小劇場界の著名女優・麻子は、夫で演出家の匠に呼ばれ、雪深い山荘へやってきた。山荘には匠によって、初対面である八人の俳優らが集められていた。匠の新作は本格推理劇で、演じる側にも犯人がわからないよう稽古は行われていく。台本が進行するにつれ、麻子を含む女優たちに疑心が兆し、それは恐るべき事件の形を取って表れた。作中劇の中に隠された真相は―。(裏表紙引用)

 


現実と作中作がシンクロしているという二重構成の作品。どちらもクローズドサークルもので、現実のほうは役者と演出者。作中作のほうを、現実の役者たちが犯人を知らされずに演じるというややこしい物語だ。なんせ、登場人物と役名の両方を覚えなくてはいけないのだから。。。まあ短い作品なので、いちいちメモをとるのはやめた^^;

 

現実のほうの設定は、主人公と演出者が「契約夫婦」だということが「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のようで面白かった(SМではないが)。主人公の性格がちょっとクールというか「スカした」感じなのも近藤作品ぽいなと。ミステリとしてはそれほど目新しくはないので評価を端折るが、人物描写については賛否両論あろうかと。演劇人なので普通の考え方は誰もしないところが。まあ私が近藤さんを読み始めた頃は、女性の心理をドロドロにリアルに描く女性作家さんというのが近藤さん、若竹さん、加納さんぐらいしか知らなかったもので、その辺の描写力はさすがだなと。読み物としては、あとがきのほうが面白かったかも。近藤さんがご自身のご病気と演劇経験を元に当時の心境を赤裸々に描かれている。