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薔薇を拒む  (ねこ3.7匹)

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近藤史恵著。講談社文庫。

 

施設で育った博人(ひろと)は進学の援助を条件に、同い年の樋野と山奥の洋館に住み込みで働き始める。深窓の令嬢である小夜をめぐり、ふたりの想いは交錯する。洋館に関わる人物の死体が発見され、今まで隠されていた秘密が明るみに出た時、さらなる悲劇が――。気鋭の作家が放つ、最終行は、読む者の脳を揺さぶり続ける。(裏表紙引用)

 


最近近藤さんづいている。「はぶらし」と一緒にタイトルに惹かれて買った本だが、なかなか良かった。

 

雰囲気はどこかのヨーロッパの懐かしい感じのするもので、舞台が人里離れた洋館という閉ざされた空間。登場人物はどこか儚げな美少年二人と、深層の令嬢とその義母、使用人が5人と少ない。あ、あと犬1匹に馬1頭。主人公である博人は施設で育ち、大金持ちからの学費や生活の援助を受ける代わりに洋館の仕事をお手伝いをする。もう1人の少年・樋野も謎めいた存在で、重い過去を持つ。出生や現在の境遇からみれば贅沢すぎるほどの待遇に感激すると同時に、なぜ年頃の少年と少女を同じ屋根の下で住まわせるなどという愚行を行うのか、という当然の疑問が湧いてくる。

 

穏やかながら少しヒリヒリとした雰囲気の中物語は進み、中盤で殺人事件が起きてビックリした。だからと言ってミステリー要素は重要ではなく、あくまでドロドロとした人間関係の歪みや心理の謎のほうに比重があるようだ。全ての謎は解けてスッキリするものの、最後はやはりちょっとコワイ。雰囲気通りというのか、タイトル一発勝負のような印象も。穏やかならぬラストは好みだったが、まっすぐ平凡に生きていけない宿命っていうのは哀しいもんだな。