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姫君よ、殺戮の海を渡れ  (ねこ3.5匹)

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敦士は、糖尿病の妹・理奈が群馬県の川で見たイルカを探すため、彼女と友人とともに現地へ向かう。当初イルカの存在を信じていなかった敦士だが、町の人々の不審な様子により、隠された秘密があることに気が付く。やがて彼らが辿り着いた真実は悲痛すぎる運命の扉を開けていく――。少年少女の切ない青春を描いた傑作恋愛ミステリ。(裏表紙引用)

 

 

少し遅くなったが、浦賀氏待望の新刊は600ページ弱の大長編。最近続いていた銀次郎シリーズではなく、単体作品だ。もう読まないとボヤいていたが、出たらやっぱり買ってしまう悲しい性。

 

この作品は、評価がなんとも難しい。浦賀氏らしいと言えばとてもらしい作品であり、ウラガーが求める浦賀世界を堪能出来る、という意味では文句はないと思う。リーダビリティも高く、大長編ながら休まず読み続けられる引きの強さ、読みやすさは評価していい(なんだか偉そうだが^^;)。

 

個人的には、銀次郎シリーズよりはいい点もあるがやはりなんだかモヤモヤするというのが率直な感想。主人公はごく普通の高校生の敦士。彼が大事に想う妹は糖尿病患者で、敦士はいつでも妹の身体を気遣って生活をしている。その姿は病気という事を差し置いてもウザイほどで、ましてや浦賀氏が描くそれといったら、「親の都合で突然出来た妹が超可愛くて俺困ってるんだが」的なマンガを彷彿とさせる。事あるごとに世話を焼く兄に「お兄ちゃんのバカ!知らない!」と叫ぶその様と言ったら夢見過ぎでもう。海なし県の群馬でイルカを見たことを信じてもらえない妹を信じてやるのは構わないのだけれど、その兄の主張やらなんやらが子どもすぎて泣けるしイライラしっぱなし。群馬で仲良くなった民宿の娘がこういう人にああいう感情を抱くとかも有り得ませんから~。

 

しかしそう言っては話が進まないので我慢して読んでいたのだが、その娘がある事故に遭ってからの展開がとても速い。どんどん敦士も年齢を重ねていき、環境も変わり、どういう物語になるのか読めなくなるあたりはさすが。あの萩原重化学工業が出てくるとは。どうも荒唐無稽で笑えるほどなのだが、この人にしか描けない物語であることだけは確か。なんだかんだ、出たらまた読む自分がイヤだ。別にツンデレではないぞ。