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化石少女  (ねこ3.9匹)

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学園の一角に建つ壁には日暮れると生徒たちの影が映った。そしてある宵、壁は映し出した、恐ろしい場面を……。京の名門高校に次々起こる凶悪事件。古生物部の部長にして化石オタクのまりあが、たった一人の男子部員をお供に繰り出す、奇天烈な推理の数々とは?(紹介文引用)

 


麻耶大先生様の新刊は、新シリーズ。化石大好きで推理も大好き、でも万年赤点といういいところのお嬢様探偵、まりあとその従僕(笑)、平凡な男子学生・彰のワトスン役コンビが織り成す本格探偵小説。

 

六章からなる短編(という名の長編)+エピローグという体裁になっており、前作の「さよなら神様」と構成は似ている。麻耶作品らしく、すべての短編で発生する殺人事件はこれと言った解決を見せず(笑)、余韻も残さず、エピローグで全ての世界を覆す挑戦的試みが明かされるという大胆な作品だ。

 

麻耶御大先生様の作品にこういうことを言いたくはないのだが(初かもしれない)、世界観が好みではなかった。と言っても「他の作品に比べたら」という程度のものであり、決して悪い作品でもないし嫌いでも苦手でもない作風ではある(フォロー必死)。ただ、この作風に慣れるまでには挫折も考えたほどであり、キャラクターを自分の中に取り込むまでには第三章まで読み進める必要があったと言わざるを得ない。なんと言っても、化石に興味がない。化石少女のオタクっぷりが凄いことは伝わるが、その扱っている化石についての説明が中途半端というか。。。いや、だからって薀蓄すごくてもそれはそれでイヤなんだけど。やたらと専門用語?が会話に出てくるというだけで、どうしてまりあが化石にはまっているのか、そこにどれほど魅力があるのかがあまり伝わってこなかった。学園にありあまるマニアックな部活動も、ギャグなのはわかっているがしつこさが際立つ。

 

肝心の事件部分も、まあこういう作風だから故意なんだろうが、はまっていないというか。全て犠牲者が学内の人間で、まりあが指摘する人物も全て校内という( ̄▽ ̄;。「さよなら神様」のときはむしろそれが面白かったんだけどな。


しかし、繰り返すが、つまらなかったわけではないし、評判ももちろん良い。ミステリ的な部分はもちろん麻耶さんにしかやれない画期的なものであるし、感心する部分も多かった。傑作の一つに上げて良いと思う。私自身の麻耶ランキングではかなり下位になるというだけだ。それも、9割の作品が4匹以上であるという状況下での評価なので、麻耶ファンならびに本格ファンには抵抗なくオススメしたい。