彼は信じている。時を超えて、勇気は伝染する、と――人は時折、勇気を試される。落下する子供を、間一髪で抱きとめた男。その姿に鼓舞された少年は、年月を経て、今度は自分が試される場面に立つ。勇気と臆病が連鎖し、絡み合って歴史は作られ、小さな決断がドミノを倒すきっかけをつくる。三つの物語を繋ぐものは何か。読み解いた先に、ある世界が浮かび上がる。(裏表紙引用)
三部に分かれたSF長編。PKは、サッカーのペナルティキックとSFのサイコキネシスの両方の意味があるのだとか。本書は2001年W杯フランス大会アジア最終予選のまさにPK戦の最中の章と、57歳の大臣が何者かから何らかの嘘をつくことを指示されている(この大臣は昔、ベランダから落下する赤ちゃんを救った過去がある)章、超能力を持つ営業の青年に家を訪ねられる章などなど、込み入った内容。超能力を持った人間は作中に二人登場しており、その時代設定もバラバラ。テーマは、まさにバタフライエフェクト。ある人の小さな行動が後々大きな災厄を引き起こすという。それを防ぐために翻弄されている人々の物語だろうか。