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アナザーフェイス  (ねこ3.8匹)

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堂場瞬一著。文春文庫。

 

警視庁刑事総務課に勤める大友鉄は、息子と二人暮らし。捜査一課に在籍していたが、育児との両立のため異動を志願して二年が経った。そこに、銀行員の息子が誘拐される事件が発生。元上司の福原は彼のある能力を生かすべく、特捜本部に彼を投入するが…。堂場警察小説史上、最も刑事らしくない刑事が登場する書き下ろし小説。(裏表紙引用)

 


初読みの作家さん。
有名な鳴沢了のシリーズではないのだが、本書を私はとても気に入ってしまった。もっとお堅い警察小説なのかと思っていたのだが、「軽い」とまでは言わずとも文章が凄く平易である。警察小説(社会派)と言えば事件よりもキャラクター付けや人間ドラマに重きを置いたものだとイメージしている。本書はその要素もそれほど重厚ではないし、キャラクターも物凄く魅力的かと言われると「普通よりちょっといいぐらい」なのだ。なのに気に入ってしまった。

 

事件はよくある誘拐事件を扱ったもの。銀行員の息子が誘拐され、身代金は銀行が支払うという点や、その受け渡し場所が少々変わっていて惹きつけられる。だが捜査の流れは特筆するような点はないと言っても良く、最近警察ものに多く見られる刺激的な描写も皆無。大きな特徴は、主人公である大友が交通事故で妻を亡くしたシングルファーザーだという点だろう。しかも、若い頃の芝居の経験を活かし、変装や演技力を捜査にフル活用している。さらに、俳優を目指していただけあって、芸能界にスカウトされるほどのイケメンらしい。その上、刑事という特殊な仕事であることを鑑みれば充分イクメンスキルも高い。義母は大友の育児にかなりご不満なようだが、いや、刑事なんだから立派にこなせているほうでしょ。大友からだけの視点だからそう感じるのかもしれないが。

 

後は、新聞記者の女とか生意気な部下とか、何人かイラっとする人物がいたなあ。シリーズものだから、これから関係性が変わってくると良いが。少し点は甘くしてしまったが、今後もぜひ読み続けたい作家に加わったと思う。