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蜜姫村  (ねこ3.7匹)

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乾ルカ著。ハルキ文庫。

 

 珍種のアリを求めて瀧埜上村仮巣地区を訪れた昆虫学者の山上一郎と妻・和子。医師免許を持つ和子は、医者のいない仮巣地区の人々を健康診断したいと申し出るのだが、必要ないと冷たくあしらわれてしまい、その異様な雰囲気に戸惑っていた。そんなある晩、一郎は住民から絶対に踏み入れてはいけないと言われていた社に向った。そして、そのまま行方不明に。村に秘められたしきたりが露見するとき、新たな禁断の恋が始まる・・・・・。(裏表紙引用)

 

 

乾さん4冊目。またしても全く違う雰囲気、ジャンルのお話。どんだけ多才なんだこの人。。。

 

ってことで今作は、「秘境」を舞台にした三代記。天正三年に村で流行った疫病を、「口から病魔を吸い取る」能力で助けることができる女が存在。その遺伝とも言うべき継承で、現在でも「蜜姫」と呼ばれる同じ能力を持った女がいた。蜜姫が暮らす村にフィールドワークでやって来た昆虫学者と女医の夫婦。村の人々は感じよく夫婦に接してくれるが、老人が多い割に病気の者がいない現状を妻は不思議に思い始める――。

 

第一部はある程度話の先が読めてしまうのだが、口から病魔を吸い取り、それを移し替える「壺」の正体やその気味の悪い描写が秀逸。ここまで怖くしなくとも^^;てっきりそのまま女医の視点で進むお話なのかと思いきや、第二部からは時代が変わり娘の視点となる。牢屋のような場所の雰囲気が最高に良かったのでちょっと残念だったが、第二部の蝶よ花よの日本的生活も美しくてなかなか良い。お優の浮世離れした純粋さと、少しのエロスが世界観を引き立ててくれる。お優が子どもから女へと成長していく様が、身体のことだけではなく恋の目覚めで表現されていくのもロマンチック。ここからほぼ恋愛ものになるのだが^^;

 

ここからが評価の分かれ目となるであろう第三部。現代を舞台にしているあたりがまた新鮮で良いのだが、普通になっちゃったかな。年代記ってだいたい第三部で面白味が薄れてしまうのだが、この作品もそういう運命を辿った模様。ページ数がもう少しあれば壮大なお話になっただろうに。それでも充分に読ませる物語ではあった。この作家さん、もっと騒がれてもいいと思うんだが。