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腕貫探偵  (ねこ3.6匹)

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謎の“腕貫”着用職員が市民の悩みを次々に解明!

大学に、病院に、警察署に……突如現れる「市民サーヴィス課臨時出張所」。
そこに座る年齢不詳の奇妙な男に、悩める市民たちはついつい相談を持ちかけてしまう。
隣人の遺体が移動した? 幸せ絶頂の母がなぜ突然鬱に? 二股がバレた恋人との復縁はあり?
小さな謎も大きな謎も、冷静かつ鋭い洞察力で腕貫男がさらりと解明!
ユーモアたっぷりに描く連作ミステリ7編。(裏表紙引用)

 


西澤作品はシリーズものが好きだ。ということで久々に読む西澤さんはやはりシリーズものを。ていうかごめんなさい、ずっとこれ「腕白探偵」だと思ってた^^;;腕貫だったとは。。そのまんま、探偵役の青年が腕貫を嵌めているから、ってだけなんだけどもっといい名前なかったかな^^;

 

それはさておき、この腕貫探偵はどういう人かというと、正体はさっぱりわからない。名前はもちろん、年齢もわからない。はたまた人間なのかどうかすらわからないこの感じはファンタジー路線とも言える。大学、病院、警察、色々なところに「個人的な相談もOK」という市民サーヴィス出張所としては異例の文句を掲げて出没するのだ。そこに無表情で座る青年はさもお役所仕事でございと言わんばかりに相談者に氏名を書かせ、誰も並んでいないのに待たせ、事務的に話を聞く。そして推理にはほど遠いほどのアドバイスやヒントだけを与え、時間が来たらサラリとそこを去らせてしまうのだ。相談者はそれぞれ、腕貫のアドバイス通りにことを進め、謎を解いてゆく。

 

概ねこういう体裁なのだが、これがなかなか面白い。殺人のような大きな犯罪ではないが、ちょっとした悪事や軽犯罪、日常の謎。それをそれぞれの登場人物が、時に悩み、時にあくせくあがきながら、自分の力で解決させていく。そこにはドラマがあり、恋愛があり、家族愛がある。推理一辺倒のミステリものとはまた違う、深みはないけど軽快でミステリアス、さまざまな表情を持った楽しいシリーズだ。