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黒猫の遊歩あるいは美学講義  (ねこ3.7匹)

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森晶麿著。ハヤカワ文庫。

 

 でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、現れた住職と失踪した研究者、頭蓋骨を探す映画監督、楽器なしで奏でられる音楽…日常に潜む、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」と、彼の「付き人」をつとめる大学院生は、美学とエドガー・アラン・ポオの講義を通してその謎を解き明かしてゆく。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。(裏表紙引用)

 


人気シリーズの第一弾を今さらやっと読んだ。フムム、なるほど。人気なのはわかる。洗練された文章に優雅な登場人物、スマートな推理、自己完結すぎない薀蓄。どれ取っても自分好みだ。しかも、私の原点であるエドガー・アラン・ポーについてここまで論理的に分析してくれていてはノックアウトも同然。(ポーの詩には馴染んでいないので「大鴉」だけはわからなかったが)

 

だがしかし。でもしかし。ハマるまではいかなかったかも。「黒猫」のキャラクターも、付き人の女の子(名前が明かされていない)も、魅力的だというのは理解できるが、ツボにはまらなかったな。ミステリとしても破綻しているものが数作あった気が。どの作品かは言わないが、○○で匂いをごまかすとかありえる?ファブ○ーズとかあるんだし逆効果だと思うのだが。他にも、恋愛観で狂った思考を持った人物が多すぎのような^^;いい風に解釈すると、この異常を含めて美学として作品を成立させているからで、リアルと共鳴することだけが物語の世界ではない、と考えることも出来るが。

 

これこそ雰囲気ミステリというやつなのかな。有名どころでは「アッシャー館の崩壊」が出てないので少し心残りだが、続編に手を出すかどうかは迷うところ。