すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

私たちが星座を盗んだ理由  (ねこ3.9匹)

イメージ 1

北山猛邦著。講談社文庫。

 

 難病の女の子を喜ばせるため、星座を一つ消して見せる男の子を描く表題作ほか、5つの物語のすべてに驚愕のどんでん返しが待つ、ファンタジックな短編集。優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で残酷に反転する衝撃は、快感ですらある。まさに、ミステリの醍醐味! 注目作家・北山猛邦の真骨頂!!(裏表紙引用)

 


ハイ、好きだった。面白かった。でも、これ、評価しづらい。。。評判ほど良いと思えなかったというか。1編目から5編目へと、読めば読むほど評価が下がって行ったというか。そもそも、デビュー作でかなり悪い印象を持った作家さんだったもので、文章力の無さと相性の悪さが致命的だったというか。でもそれでもここまで読ませたのだから評価するべきだとも思うというか。とりあえずまあ各感想。

 

「恋煩い」
恋占いをテーマにした物語で、男女3人の恋と友情が作品の肝となった作品。ミステリとも思えないし、女の子がひたすら噂を信じておまじないを実行していく退屈な話だなあと思っていたら。最後とんでもなくドス黒い展開に。ラスト1行を売りにしているだけあって、その破壊力にやられた。

 

「妖精の学校」
その島では、記憶を失った子どもたちが幸せに暮らしている―しかし、ルールを破ると大変なことになると聞いた主人公の少年は、親しくなった少年と共に禁を破ることになったが――。隠し持っていた紙すら見通す魔法使いが、そばを通る子どもの存在に気がつかないとか不自然じゃないか?オチもちょっと想像の範囲内だったし。そしてラスト1行の意味がサッパリわからない。お友だちのべるさんもわからなかったようで(アテにするなよ^^;)。べるさんが「調べないとわからないオチってどうなんだろう」と仰ったのには完全に同意。

 

「嘘つき紳士」
借金まみれの男が、拾った携帯電話を悪用し、持ち主の恋人とメールを始めるお話。これは面白かった!こういうどうしようもない人間のことを、「なんかちょっとかわいそう」とさえ思えるのは物語に深みがあるのだと解釈。

 

「終の童話」
石喰いに狙われた村。少年が想いを寄せる少女も石にされてしまった。それから長い年月が経ち、呪いを解くことが出来る人物が村を訪れるが・・・。お話としては満点。呪いを解かれる順番が決まってから、石が何者かによって破壊されるくだりなどは秀逸。しかし、ラスト1行の衝撃には至らなかった。これはフィニッシング・ストロークというよりリドル・ストーリーではないか。

 

「私たちが星座を盗んだ理由」
星座についての知識がついた気になれる物語。病気で姉を失ってしまった主人公が、かつて想いを寄せた男性と再会する物語。なんとなく、結末は想像がついたし、ぶっちゃけあまり物語には魅力がなかったのが残念。表題作だから期待したのだが。


以上。
という感じで、評価にバラつきがある短編集となった。好きなのは1、3、4。2、4はもっとひと捻り欲しかったなあ。大変失礼だが、米澤さんや初野さんならそうするだろうと思ってしまった。いや、でも、面白かったし好きだったからこその辛口。くだんの「クロック城」の作家さんがここまでやってくれたことに感動すらおぼえているぐらい。読破しようかなと思っているほどだもの。愛と期待ゆえのムチということで。