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後悔と真実の色  (ねこ3.7匹)

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“悪”を秘めた女は駆除する―。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮地に立たされる。これは罠なのか?男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。第23回山本周五郎賞受賞作。(裏表紙引用)

 


貫井さんの大長編警察小説。いつでもヒットを飛ばす作家さんではないのだが、この700ページ近くにも及ぶ筋肉痛必至の小説、かなり読み応えがあった。貫井さんお得意の、人間の心理描写に最も力を入れた物語で、ほとんどの登場人物が刑事、警官となっている。中心となる刑事にそれぞれ相棒が付き、「カン」「地取り」「ブツ」に分かれ、殺人事件を捜査してゆく。

 

まず捜査一課主任の西條。比較的若く、ブランドのスーツを着こなし、「名探偵」とあだ名されるほど頭脳明晰な男。この西條と第一発見者の制服警官大崎が「カン」担当。
その西條を一方的に嫌う綿引と、巡査部長の金森が「地取り」。
捜査一課刑事の三井と田崎が「ブツ」担当。
西條はなんと、不倫をしている。妻との仲は最悪なんだけど、うーん、これ、妻のほうもおかしくないかい。結婚したら子どもが出来るって分からないかい。子どもが出来ても一人で海外旅行とか好き勝手に出来ると思っていたのかい。夫の協力とかそういう次元のこと言ってないよねこのシト。
そして綿引は、西條への思いが凄く自分勝手で嫉妬の塊だなあと。要は自分より出来る上にルックスもいいから嫌っているんだよねえ。しかしこの綿引、家庭環境はかなり気の毒。だから人より出世欲が強いというわけで。

 

前半はこんな感じで、事件や人物の説明のような状態が続くので退屈。しかし、中盤からグっと面白くなる。西條が不倫によって、ここまで人生を転落させるとは驚き。不倫はどうかと思うけど、ここまでしなくても良かったんじゃ。。と哀れを誘った。しかし、それからも這い上がって来ようとする精神は良かった。綿引も、自己嫌悪から来る変化なんだろうけど、最初とかなり西條への気持ちが変転して行ったのが好印象。

 

犯人の語りも挿入されているが、まあこのあたりはよくある犯人像かなあと思う。新鮮味がないかな。こう言ってはナンだが、犯人はかなり早い段階で断定できた。登場人物で、この犯人にぴったりくるのってこの人しか居ないし、犯行もすべて可能。ここは隠そうともしていないのか、登場人物のほとんどが○○じゃん^^;だったらそうじゃん^^;一人目の犯行だけ考えと一致しないので、あれ?だとするとアンフェアじゃない?貫井さん独自の引っ掛けか?と思ったが、そこはあっさり氷解したので拍子抜け。

 

とは言え、長いながらもなかなかの人間ドラマでありました。