すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ネバーランド  (ねこ4.2匹)

イメージ 1

 

舞台は、伝統ある男子校の寮「松籟館」。冬休みを迎え多くが帰省していく中、事情を抱えた4人の少年が居残りを決めた。ひとけのない古い寮で、4人だけの自由で孤独な休暇がはじまる。そしてイブの晩の「告白」ゲームをきっかけに起きる事件。日を追うごとに深まる「謎」。やがて、それぞれが隠していた「秘密」が明らかになってゆく。驚きと感動に満ちた7日間を描く青春グラフィティ。(裏表紙引用)

 

 

ぐっはぁーーー!もっふぁー!これ好き。めっちゃ好き(*´Д`)。恩田さんの学園もの、最高にいいなあっ。「ネバーランド」というタイトルからして、ほのぼのした感じなのかと思いきや、ほのぼのした男子高校生たちが重苦しい家庭環境や辛い環境に置かれていることを順番に告白していくというなかなかにヘビーな内容だった。

 

学園ものとは言え、年末はほとんどの寮生が帰省しているので、学生は事情で帰れない4人の男子生徒しかほとんど登場しない。その4人がそれぞれまたいいんだこれが。語り手の少年美国(よしくに)は別れた彼女と揉めているのには過去に仰天する経験をしたからだし、美国と一番仲良しの寛司(かんじ)は文武両道だが両親が離婚調停中、寮生ではないのだが個性的で騒がしい統(おさむ)は昔亡くした母の死因になにやら謎を持っていたし、穏やかだが時折見せる冷淡な目つきが怖い光浩(みつひろ)に至ってはここに語るのも気の毒なくらいえげつない家庭で育った。

 

ここで、重いだけのお話に仕上がっていないのが恩田さんの凄いところ。あくまで4人は友達で、ケンカはするが基本的には悪いこともするし女性にも興味はあるしお腹はすくしの陽気な男子。校内のホットプレートを探しに行ったり酒盛りしたり時には学問を語ったりとあくまで普通。しかも、章ごとに首つり人形が現れたり、病死した生徒の霊を見たり、様々な謎が提示されてゆく。その謎の出し方がまたセンスいいんだ。ゾっとしたり不穏な空気になったり、でも次のページではもう立ち直っていたりと、あくまでもこれは彼らの青春の1ページなのだという表現の仕方がとても気に入った。たった一週間の出来事だったけど、きっと彼らにとって忘れられない一週間になるんだろうな。大人になった彼らにも会ってみたいけど、ネバーランドだけにそれはナンセンスだろうか。