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真夜中の五分前 side-A/side-B (ねこ3.7匹)

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本多孝好著。新潮文庫
少し遅れた時計を好んで使った恋人が、六年前に死んだ。いま、小さな広告代理店に勤める僕の時間は、あの日からずっと五分ズレたままだ。そんな僕の前に突然現れた、一卵性双生児のかすみ。彼女が秘密の恋を打ち明けたとき、現実は思いもよらぬ世界へ僕を押しやった。洒落た語りも魅力的な、side‐Aから始まる新感覚の恋愛小説。偶然の出会いが運命の環を廻し、愛の奇蹟を奏で出す。(裏表紙引用)

 


学生時代の恋人を交通事故で亡くした男の恋愛と再生の物語。職場の上司との関係性や恋愛遍歴などを見ていると、器用でそつがないだけの男という印象。それなりにモテるしそれなりに仕事も出来るしコミュニケーション能力も低くはない。だが他者に阿ったり媚びることがないため、不器用なのかなという一面も。社会人になって様々な男性に「君のことが嫌いだ」と言わせるって凄いと思うのだが。うーん、実はあまり私もこの主人公好きじゃない。クールというのか感情がないというのか、さらにそれを自覚してるあたりがイラつかせるのかなあ。で、進行形で男の恋人となる女性がこれまたすごい設定。一卵性双生児なのだけど、昔から自分が姉妹のどちらなのかわからないという。同じ人を好きになって同じものを好きになって同じような話し方をして、親も区別がつかなくて。だったらここにいる私はどっち?みたいな。あーこういう会話しんどい。何かが欠けている男と自分の存在意義に疑問を感じている女ということで、お似合いなのかなあとは思う。

 

そんなこんなで、双子の片割れ+その夫とダブルデートをしたり転職したりお墓参りをしたりで、side-Bになると人生崩壊するくらい大変なことも起きて、それでもクールに生きていながら、最後はダム決壊みたいに感情が生まれて、様々なことをやり直していくんだろうな、というお話。まあ、良いお話なんだが
オシャレすぎて実体を持っていないような感じがしてくすぐったい。もうちょっと元上司の小金井さんとの絡みが後半にも欲しかったなー。普通に続きものならこの薄さで二冊に分けた意味あるのかなーと思ったり。分類的には好きとは言い難いけど面白かった本ということで。