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二宮敦人著。アルファポリス文庫。

 

 拾った携帯電話のデータフォルダには、友人の死体映像が残されていた(『クラスメイト』)。ふとしたひょうしで部屋の壁に穴があいた。その穴は殺人鬼の部屋とつながっており―(『穴』)。目を覚ますと、全裸で真っ白な部屋に閉じ込められていた女子高生。脱出する方法はあるのか(『全裸部屋』)。携帯ホラーの天才作家!待望の文庫化。(裏表紙引用)

 


本屋でこの作家さんの本ばかりを積んで特集していたので買ってみた。携帯小説とは知らず!

 

で、読んでみた。あれ?これ、嫌いじゃない・・・(;^ω^)。

 

「クラスメイト」
拾った携帯電話に残されていたクラスメイトの惨殺画像を見てしまったケイタは、親友の藤島と共に犯人を捕まえようとする。あるさびれた団地で犯人への罠を仕掛けた二人だが――。
いや、警察か親に言わんかい。というツッコミは置いておいて、読ませる力だけで突っ走った普通のホラー。どんでん返し用の意外な真相が用意されているが、文体といいその結末といい、「どこかで見たような」の域を出ていない。てか、「夕方になりました」を表現する文章が「夕。」って・・・(;'∀')

 

「穴」
浪人生としてある寮に住み始めた女性は、ふとしたことから、自分の部屋の壁に穴を開けてしまう。その壁の向こうには、建築上余ってしまったスペースがあった。そこには袋詰めにされた死体が――。
いや、警察に電話せんかい。というツッコミは別として。このお話が個人的には一番面白かった。恐らくは主人公の精神が元から異常である前提の不条理ホラー。そこに部屋があって死体がある理由も一番に突っ込むところではないのだろう。映画の「CUBE」「SAW」みたいなもんだ。殺人鬼とおかしな女性との文通による心の疎通が描かれているが、前作が機械で今作が手紙というのが引き出しの多さを感じさせる。

 

「全裸部屋」
この作品だけはとことん不条理。ある少女が目覚めると全裸になっており、窓もドアもないただの白い部屋に監禁されていることがわかる。しかもその部屋は、3時間につき0.5メートル縮んでいて――。
本作で異常なのは登場人物のほうではない。哲学的な方向へハンドルを切ってしまったためか、緊迫感がなくもったいない作品になってしまった。ただ、結末は普通はこうはならない。そういう意味ではやはり変わった作家さんだなあと思える。


以上。

 

ミステリ的などんでん返し要素がしっかりあるので、伏線などもきちんとあればなお良かった。文章についてはもうあれこれ言わないが、本で読んでいるせいか思ったよりまとも。気になったのは、登場人物の行動がいちいち不自然。すぐ使うと予想される買い置きのコーヒーを、不安定な椅子に乗って転ぶほどめんどくさい場所に置くはずがないし、壁を壊しておいてその場限りの証拠隠滅をしたり、こんな論理的でない人間が大学受験に挑戦して大丈夫なのか?と思った。成績の良さを教室で大声で自慢したりするような女がそんなにモテるとも思えないしそもそもそんな人いるの?どうも、人物全てが「次こういう展開だから、それに合わせた行動をさせないと」という理由で動かされているコマにしか見えなかった。

 

あれ?文句言っちゃった^^;でもまあ、私は割と好みだったので時々読んでみようと思える作家でした。世間での評価は「山田悠介っぽい」らしいけど(;^^A