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珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を  (ねこ4.2匹)

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岡崎琢磨著。宝島社文庫

 

 京都の小路の一角に、ひっそりと店を構える珈琲店タレーラン」。恋人と喧嘩した主人公は、偶然に導かれて入ったこの店で、運命の出会いを果たす。長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ・切間美星だ。美星の聡明な頭脳は、店に持ち込まれる日常の謎を、鮮やかに解き明かしていく。だが美星には、秘められた過去があり―。軽妙な会話とキャラが炸裂する鮮烈なデビュー作。(裏表紙引用)

 

 

個人的に開催していたイラスト表紙祭り。イマイチそうな気がして(買うなや)最後に取っておいた作品が一番お気に入りになったという。

 

日常系ミステリっていうものは立派にミステリの一ジャンルを確立していると私は考えていて、これを「ユルい」の一言で片づけられてしまうのは実にもったいないと思う。私が好むのは、魅力ある謎が提示され→考えられる可能性を排除していき→伏線を回収しながらこれ以外はない真相を開陳する、というミステリ的にもマニュアル化したこの流れだ。ここに、小説全体を包む大仕掛けがあればなお良し。本作については、その流れを踏襲していたゆえ充分合格点。

 

上品な語り口であるが毒舌でもある喫茶「タレーラン」のバリスタ切間美星と、平凡で優柔不断だが根は純粋なアオヤマ、女好きでお調子もののマスター・藻川のやり取りは異世界風だがコミカルでとても楽しかった。美星さんは推理をする時には必ずコーヒーミルをコリコリコリと挽く。アオヤマの話を聞きながら、「全然違うと思います」という言葉でぎゃふんと言わせ、真相に到達したら必ず「その謎、たいへんよく挽けました」の決め台詞。ちょっとお寒いがご愛嬌ということで。中盤から明かされる、美星が客に一線を引いて接する理由は思ったより切実で重たい。その「過去」であるはずの重荷が、次第に現実の恐怖へと変わっていく――。その体験を通じて、2人が心惹かれあうさまにはドキドキし通しだった。さらに続く、キャラクター全体に仕掛けられた真相には驚き。だ、騙された。終盤はサブタイトルにイヤな予感を感じさせられながらも、それすら引っかけだったんだなあと二重に感心。ついでに言えば、アオヤマと私の誕生日が一緒だったので親近感。いやはや、見事な珈琲でした。

 

第一作ゆえか、構成がとっちらかっているのか文章にスマートさが足りないせいか、詰め込み過ぎた感は確かにある。細かい事を言えば、人にビンタをする(しようとする)人物が多すぎて引くこともあり^^;、あと認められてるとは言え飲食店で〇を〇うのはどうかなー、私なら行きたくないなあと思ったり。
ちょっと修正の余地はありかな?キャラクターを気に入るかどうかも結構評価の分かれ目かも。私は今年1、2を争う大ヒットとなりました。早く3巻まで揃えようっと。