ユッシ・エーズラ・オールスン著。吉田薫・福原美穂子訳。ハヤカワ文庫。
いったいこの書類はどこから送られてきたんだ?いつのまにか特捜部Qのデスクに置かれていた20年も前の事件の書類。18歳と17歳の兄妹が惨殺された事件だが、その後犯人は自首して服役中。つまり未解決ではない。なのになぜ未解決事件を調査する特捜部Qに?興味を抱いたカールとアサド、それに新メンバーのローセは再調査に取り組むが、当時の容疑者たちはいまや有力者に…ますますパワーアップの人気シリーズ第2弾。(裏表紙引用)
お気に入りのデンマーク・ミステリー第2弾。
今回もはみだし刑事カールと変人助手のアサドの噛み合わなさは見事。それに加え、もっと噛み合わない女性新メンバー・ローセの登場で’キャラものミステリ’の立場を確立した模様。カールはある意味一匹狼ふうなところが逆にステロタイプなのだが、過去に遭遇した痛ましい事件を現在進行形で背負っている状態の為生活感が伝わるところがいい。でないと、でろんでろんに甘い珈琲を淹れたり聞き込みのたびに相手を犯人扱いしたりするアサドが主人公を喰ってしまうだろうから。ローセは天然ボケのアサドと対照的にキャンキャン吠えるわ文句ばかり言うわであまりチームの華にはなっていない(笑)。
そんな愉快な特捜部Qの仲間たちだが、扱う事件のほうは重苦しいったらない。それが死ぬまで殴り殺すことを趣味とするような犯罪グループが、大人になってセレブとなり、陰でまた悪事を繰り返している、そんな事件なのだから。狩猟で動物を殺すのはまだマシなほうで、仲間のうちの1人がかつての殺人事件の犯人として服役させられているわ紅一点の女性は現在ホームレスとなって水面下で息をひそませているわで、過去が明るみになればなるほど本当に吐きそうなほど気分悪い。前作の犯罪も同様だったが、ここまで腐りきった人間ばかりをよく生み出せるなと思う。