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藁の楯  (ねこ3匹)

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木内一裕著。講談社文庫。

 

二人の少女を惨殺した殺人鬼の命に十億の値がついた。いつ、どこで、誰が襲ってくるか予測のつかない中、福岡から東京までの移送を命じられた五人の警察官。命を懸けて「人間の屑」の楯となることにどんな意味があるのか?警察官としての任務、人としての正義。その狭間で男たちは別々の道を歩き出す。(裏表紙引用)

 


映画のほうを先に観たので読むつもりはなかったのだけれど、100円だったのでつい。筋は8割方映画と同じだった。清丸国秀という最低の犯罪者に孫娘を殺された日本有数の資産家・蜷川は金の力を持って全国に広告を出した。「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします」――。逃亡中の清丸は、自分の命大事さに自首。SPである銘莉は、金目当てに清丸を殺そうとする国民から清丸を守る任務を受ける。しかし一番恐ろしいのは一般人ではなく、清丸に近づける警察官だった――。

 

割と突拍子もない設定で、エンターテイメントと割り切っても無茶ではないかと思う。が、ホームページが削除されない理由、犯罪が堂々と新聞紙上に載せられた状況などなど、ツッコミどころはきちんと穴のないよう押さえてある印象。清丸の反吐の出るような気持ち悪さや欲望にまみれた人々がいやでもかと描かれており、しつこいほどだ。内容の斬新さだけを取り上げればそれなりに楽しめ、良い作品ではなかったかと思う。が、個人的にはこの原作は残念極まりなかったと言える。

 

とにかく、文章がもうダメダメ。読点の度に改行、単調な文体。まるでノベライズのようだった。主人公や登場人物にそれなりの深い葛藤や過去があるのに掘り下げ切れる文章力がまるでなく、すべて絵空事のよう。その割に銃についての説明はやたら詳しい。それいらないから。ラストもなんじゃそれ、というほどあっけない。どうしても映像と比べてしまうが、藤原竜也大沢たかお等の演技が凄まじかったので、とてつもない「コレジャナイ感」だった。白岩が松嶋菜々子になっているのは確かにおかしかったけど。この機会に言いたいけど、ビジュアルバランス、客入りの都合だけで男性を女性に替えて映像化するのやめてほしい。

 

それはさておき、この作家さん、「ビーバップ・ハイスクール」を描いた漫画家さんなのだとか。それは知らなかった、ビックリ。なのでこれ以上は悪く言えなくなったという(;^^A