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鬼畜の家  (ねこ3.7匹)

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深木章子著。講談社文庫。

 

我が家の鬼畜は、母でした―保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。巧妙な殺人計画、殺人教唆、資産収奪…唯一生き残った末娘の口から、信じがたい「鬼畜の家」の実態が明らかにされる。人間の恐るべき欲望、驚愕の真相!第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、衝撃のデビュー作。(裏表紙引用)

 


講談社のSNSで話題になっていたので読んでみた。流行りのイヤミス系かなーなんてことを思い。元警察官の私立探偵榊原が犯罪関係者に当時の話を聞いて回るという独白形式の小説。あそこまで読みやすくはないけどもろ湊かなえさん風。言葉使いが独特な人が二名いて、読みづらかったなあ。元々インタビュー式のミステリーってあまり好きじゃないんだ。

 

内容はと言えば、北川家の母と息子が車で転落事故死したことから、なぜ死体が発見されないか、事故なのか自殺なのか、それとも――という疑問に対する調査が始まり。母の郁江がいかに鬼畜な女か、家族がどれほど犠牲になったかが様々な人の口から語られる。夫を金目当てに殺害し、末娘を親戚に養女に出したあげく放火殺人を強要し金をせしめ、さらにはまた金目当てにその末娘を殺害しようとし、失敗して可愛がっていた長女が転落し、、、と、ここまで書いただけでもその鬼畜っぷりが伺える。しかしまあ、文体のためかさほどうんざりはしなかった。私立探偵榊原も淡々としてるし(個人的にはあまり好ましい人物ではなかった)これぐらいのイヤイヤなら、他作家さんにもっと凄いのがいるしね。どちらかと言うと、娘と関係を持つ医者の妻のほうが鬼畜っぽかったような。首切るか?普通。

 

期待してたよりも普通だなあというのが正直な感想だが、島田荘司氏が選出しただけあって、ミステリー部分は他のイヤミス群よりは上回っていたかと思う。きちんと伏線が敷かれているし、意外性も回収も見事。そのかわり、またしても鬼畜度は下がった気がするが。

 

ところで、この作家さん新人だけど1947年生まれなのだとか。東大卒で元弁護士、どうりで語彙が豊富だなあと思ったわけだ。独白形式ではない他の作品も読んでみたいかな。