すべてが猫になる

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痺れる  (ねこ3.5匹)

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十二年前、敬愛していた姑が失踪した。その日、何があったのか。老年を迎えつつある女性が、心の奥底にしまい続けてきた瞑い秘密を独白する「林檎曼陀羅」。別荘地で一人暮らす中年女性の家に、ある日迷い込んできた、息子のような歳の青年。彼女の心の中で次第に育ってゆく不穏な衝動を描く「ヤモリ」。いつまでも心に取り憑いて離れない、悪夢のような九編を収録。(裏表紙引用)

 


これでまほかる文庫読破かな。
う~ん、短編集はこの人イマイチかなあ。良いのもあるけどそうでもないのもある、という世のほとんどの短篇集に当てはまる感想。長編ほどのドロドロイヤイヤはないけど怪奇譚のような語り口なのでまほかる美学みたいな世界観が確立しているかも。植物や爬虫類(かな??)を題材にしたものが多いのも特徴。寂しい女の孤独や心の闇が一貫して描かれ、読めば立ち直りが難しい。それでも中にはオチのついたミステリー仕立てのものもあって、映画館で痴漢にあう女性の欲望を描いた「TAKO」(タイトルが悪いと思う)や身内の女性関係に悩む「クモキリソウ」などの結末は小気味が良かった。はっきり自分好みだと言えるのは一人暮らしの女性の家の屋根や物置やドアの立てつけなどを次々と直し、早朝から通い詰める謎の男の恐怖を描いた「テンガロンハット」。笑いと残酷を同一に表現したものが目立っていたように思う。