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機械探偵クリク・ロボット/Krik-Robot (ねこ3.8匹)

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カミ著。ハヤカワ・ミステリ文庫。

 

古代ギリシャの偉大なる発明家の直系の子孫、アルキメデス博士の発明になるクリク・ロボットをご覧ください。事件が起こるや、計算機としての能力を最大限に発揮し、正確無比な方程式を立て、代数学的に謎を解くのです。その冷徹な推理力の前に、解けない謎などこの地球上には存在いたしません。人類史上初の機械探偵の推理を描く二大巨篇を一挙収録!さらに加えて著者カミが放つ本邦初訳コントも収録する決定版(笑)(裏表紙引用)

 


60年以上も前の作品。今年早川書房から文庫新刊として発売されており、ふざけたイラストに興味を持ってつい手を出してしまったもの。あらすじに(笑)とかついてる本なかなかないと思われ。このカミという作家さんは本名をピエール・ルイ・アドリアン・シャルル・アンリ・カミと言うそう。長いねえ。著者紹介には「闘牛士を志すも断念し、パリに出て俳優を志すも大成せず」と記されていて生き方からしてユーモア満載のようだ。かのチャップリン絶賛のユーモア作家だそう。このゆるキャラ以下の気の抜けたイラストもカミの手によるものだとか。挿絵として作中にたくさん挿入されているのがたのしい。


で、内容。
一篇目の「五つの館の謎」は、館の庭園で、額にペーパーナイフを刺されて殺された男が見つかり、館の住人達が容疑者となるが、やがてはかつての連続盗難事件と話は繋がって――という本格ミステリ
遺体が喋ったり、シケモク愛好家がいたり、要点を話さない人物がいたりととにかくハチャメチャ。クリク・ロボット自ら暗号で挑戦(普通暗号とは犯人側が出すもの)してくるのが最大のミソ。話せるし字の印刷も出来るのになぜ暗号(笑)。クリクに搭載されている機能「手がかりキャプチャー」「推理バルブ」「仮説コック」「短絡推理発見センサー」「思考推進プロペラ」「自動式指紋レコーダー」「首長潜望鏡」などなど(まだまだある)を、すべて役立てているのが地味に凄いと思った(笑)。結構まともなミステリ。


二篇目の「パンテオンの誘拐事件」は、パンテオンから有名人の棺が盗賊団に盗まれた、というもの。
こちらも名前のやたらめったら長い(作者より)容疑者や、会話がじれったい新婚旅行の夫婦などが出てきてドタバタに拍車をかける。クリクは裏に回って最後にいいとこかっさらう、という感じで、実際に動いているのはもちろんアルキメデス博士。ふざけてはいるが、論理的にも瑕疵はなく、オチも皮肉がきいていて感心出来る。この訳者、暗号やダジャレなどもきちんと日本の読者向けに直してくれているのが素晴らしいな。


そしてあとがきを挟み、犬にまつわるコントとやらを二篇強制的に読まされる(笑)。いや、でも、しっかりお笑いをやっているというか、きっちり起承転結ついてて破綻がない。私はあるぐらいのほうが好きだったりするが。日本で言うところの六とんから下品要素を抜いたみたいなノリ。。。シリーズとしてはこの二篇しかないらしい、残念。