すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

特捜部Q ー檻の中の女ー/Kvinden I Buret (ねこ4.3匹)

イメージ 1

ユッシ・エーズラ・オールスン著。ハヤカワミステリ文庫。


捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マークは新設部署の統率を命じられた。とはいってもオフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変人アサドの一人だけだったが。未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」は、こうして誕生した。まずは自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!デンマーク発の警察小説シリーズ第一弾!(裏表紙引用)



ひゃっほぅ!またまたお気に入りの警察小説を見つけてしまった。興奮しまくり。古い友人が面白いというので試しに買ってみたら、これがもう好みど真ん中!デンマーク小説自体多分初めてだが、何の抵抗もなく読み進められる。

あらすじだけを拾えばまるで「あ、相棒!?^^;」だが、まあそれもあながちズレてはいないぐらいのキャラ立ち。カールは自分の楯になり全身不随になってしまった同僚の存在を抱えるものの、一匹狼の例に漏れず活動的でユーモア(ブラック系だが)に溢れ、正義感が強い。カールの相棒となるシリア系(これもびっくり)のアサドの個性もこれまたひどい。一見おとなしいのだが、内に秘めたる暗闇と情熱は時に爆発しカールを戸惑わせる。普段はおかしな音楽や料理に囲まれ、周囲をも巻き込む変態ぶり。


そして重要なのがカールが扱うこの事件の内容。あるやり手の女性議員・ミレーデが悲惨すぎる誘拐監禁事件に巻き込まれているのだ。章ごとにミレーデが語り手となり、そのひどい監禁状況があらわになるのだが。。これがもうほんとにひどい。何年もの間、気圧を上げられたまま(外に出ると身体が爆発するほどの期間)一日一回のバケツの中の食事とトイレの交換だけで放置されるのだ。歯も磨けず、歯茎が膿んでしまい、それでも生かされ続ける。そこまでされなくてはいけない恨みとは一体なんだろう?読者はミレーデと共にその謎を追い続けてゆく。


読了した今、犯人に対する怒りがやまない。ここまでされていい人間がいるはずがない。恐ろしい犯人に立ち向かい、足を棒にし、自身の苦しみと闘うカールは、事件を解決してもなお奢ることはない。それは自己嫌悪によるものが大きいのだろうが。。ジェフリー・ディーヴァードン・ウィンズロウ、フロストなどがお好きな方なら絶対はまること必至。今第三弾まで文庫化されていることがわかったので、絶対に読み続けたい。ますます物語に深みが出るらしいからね。