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彼女の血が溶けてゆく  (ねこ3.5匹)

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浦賀和宏著。幻冬舎文庫

ライター・銀次郎は、元妻・聡美が引き起こした医療ミス事件の真相を探ることに。患者の女性は、自然と血が溶ける溶血を発症、治療の甲斐なく原因不明のまま死亡する。死因を探るうちに次々と明かされる、驚きの真実と張り巡らされた罠。はたして銀次郎は人々の深層心理に隠された真相にたどり着けるのか。ノンストップ・ミステリーの新境地。(裏表紙引用)


あの浦賀和宏が文庫書下ろしでこんな作品を出していたとは。しかも医療ミステリー、いつから君は東野圭吾になった?本屋で平積みされているし、純菜シリーズ(ほか)の作者と同姓同名の別人かと疑ったじゃないか。そして内容はと言えば本当に普通にどこにでもある医療ミスを扱ったミステリー小説で、浦賀のあの中二病っぽい文体も親が子を食うネタも見事に封印。おいおい、物足りねーよ!

ということで、浦賀ということを意識から除けばなかなかの内容。よく取材されているのかなと思うし(素人の私には間違っていてもわからない)、文章もひどくはない。読み続けるにつれイライラするキャラクター(30代でゲーセンでふらふら毎日遊ぶ女性とか、被害者とされる女性の行動や心理の有り得なさとか)にはきっちり動機や理由があった点などは感心させられた。中でも後半のどんでん返しは見事で、浦賀の成長を実の親のように喜んだ時間もあった。


が、しかし。この人やはり浦賀だと思ったのは後半も後半。元々がお年寄りを騙し営業成績を上げ、医者である妻に離婚されたフリーライターのこの主人公、時々自身の仕事の非道ぶりを鑑みたり妻に離婚された自分の性格を省みたりと殊勝なところがカンにさわるという救いのない魅力のなさをお持ちだったが、最後の最後にとんでもない爆弾を落として行った。やった場所も場所なら内容も内容。もちろん相手に非はあれど、それとこれとはまた別で。フラれたモテない男が出来る女をジメジメと思い続けて逆ギレ、としか思えなかったんだよなあ。。男の嫉妬ほど醜いものはないんだぜよ。