すべてが猫になる

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puzzle  (ねこ3.7匹)

恩田陸著。祥伝社文庫

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとした思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体――コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー!(裏表紙引用)



知的な本だな、と思った。

最近ハマりつつある恩田さんの中編小説。出だしこそは新聞記事や雑誌記事の抜粋が一見何の関連性もなさそうに並び目がチカチカしたものの、本編からは至って普通の推理小説だった。この作家さんに対してミステリーとしての評価はすべきでない、という評価――を持っている私だからこそかもしれない。舞台が孤島なのもさることながら、同じ場所でほぼ同じ時間にまったく別の死因でもって現れた三つの死体という、さながら島田荘司もびっくりの状況設定だ。

体裁としては、孤島を訪れた二人の刑事が調査と会話でもって事件を解決していくすこぶるシンプルなもの。舞台の二人芝居をイメージさせられた読者も多かろうと思う。推理方法が超人的な頭脳だなあと感じさせる難易度だったことを除けば読みやすく親切な’普通のミステリー’に収まったことに驚いた。恩田氏にはこういうものを求めていない部分も無きにしも非ずだけどね。もう少し長くても良かったかな。