すべてが猫になる

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まだ人間じゃない/The Golden Man (ねこ4.2匹)

フィリップ・K・ディック著。ハヤカワ文庫。

12歳未満の子供は人間として認めず、許可なく屋外をうろつく子供をまるで野犬やのら猫のように狩りたてて殺してしまう、戦慄の世界を描いた表題作「まだ人間じゃない」、異星人による奇妙な侵略をうける地球の物語「フヌールとの戦い」、人類存続のため努力しつづけるロボットの苦闘をスリリングに描く「最後の支配者」、広告戦争が極限にまで達した騒々しい未来社会を皮肉な筆致で活写する「CM地獄」など、8篇を収録。(裏表紙引用)


フィリップ・K・ディック2冊目~。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」以来読んでなかった、いかんいかん。短編集を読んでさらに確信した、私はこういうSFが大好きなの!o(><)o


「フヌールとの戦い」
フヌールという異星人(わりと友好的)の特徴は、人間の色々な姿に変わりそれを統一させて現れること。しかし身長が人間と比べ異常に小さいので、グレーのビジネススーツを着て現れてもバレバレ(笑)。向こうは本気で変装できてるつもりだから笑ってしまう。人間の目下の悩みは、やつらがもしわれわれと同じ背丈になったら見分けがつかないではないかー!という。。面白味はその方法にあるところがズレてるなあ。

「干渉する者」
未来は滅亡する、その原因は我々の探査機による調査である。なぜそうなったのか現地に飛び追求する任務を背負った主人公だが、その地には人間は1人もおらず、ただそれ以外の生物が存在していた。しかも彼を襲ったのは意外な生物で。。。なんか「ザ・フライ」を思い出した。

「運のないゲーム」
超能力者を使ったサーカス団がやってくる。彼らの見世物は素晴らしいが、その代償の大きさを考えた人々はある策を思いつくが。。。策と策のだまし合い。人間ってバカだなあと苦笑してしまうオチは一読の価値あり。

「CM地獄」
人々は宇宙船で出勤し、街中にはセールスロボットがうようよ。そんな便利な未来は広告地獄だった。主人公の会社員は一日中耳元につきまとう宣伝に嫌気がさし脱出を試みるが。。。いやはや、あきらめろってことかな(笑)

「小さな町」
家庭に生活に嫌気が差した主人公の男は、かねてよりハマっていた模型づくりに夢中になる。その模型では彼の生きている町が彼の思いのままになりそれが現実となってゆく。。一方で浮気をしている妻とその模型との接点がうまいこと出来てるなあと。

「まだ人間じゃない」
遠い未来、12歳未満の子供は両親の意志で殺しても構わないという恐ろしい世界。その理由が、12歳未満は魂がない、という判断ゆえ。その識別は「高等数学が解けるかどうか」にあるというのがなんともはや。ある少年の父親は、自分は高等数学が解けないし魂がないから殺せと反逆する。アナーキストとして立ち向かった男の悲劇。。この作品に限らずだが、読み手(書き手)に動かぬ「倫理観」があるという前提でないとこのお話のメッセージ性は伝わらないところ、それがこういう空想物語の醍醐味だなと思った。


以上。よくわからないお話も混ざっていたのだが^^;、概ね素晴らしい作品集。多くの「SF苦手」読者と同じように私も小難しいものは苦手だし、そもそも物語が面白くないとお話にならない自分としては自分の好奇心を満足させる珠玉の短編集と言って差し支えないでありましょう。