すべてが猫になる

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青銅ランプの呪/The Curse of the Bronze Lamp  (ねこ3.7匹)

 

エジプトの王墓から発見された青銅のランプには呪がかかっている、と男は言った。そして、調査隊の一人、ヘレン・ローリングは信じがたい状況で、予言通りにこの世から魔法のように消え失せてしまったのだ!さらに謎の男は、次の犠牲者を予告した……。エラリー・クイーンと語り明かした結果、事件の発端として「最も魅力的」と結論されたという、人間消失の謎に挑んだ名作。(裏表紙引用)


425ページって、カーの小説ではかなり長いほうなんでない?しかもH・M(ヘンリ・メリヴェール卿)シリーズ。カーの作品にはさまざまなシリーズ探偵がありますが、ご存じない方のためにご紹介。大柄でがっしりしたまるで酒樽のような体型をした男で、垂らした帽子の縁の下から鼈甲細工の眼鏡がとび出しており、その眼鏡の後ろには、カイロの乞食たちですらたじろがざるをえないだろうと思わせるほどの敵意に満ちた顔がのぞいていた
そしてそんな素敵な彼のお人柄はと言うと、タクシー料金をぼられた事に腹を立て、アラブ語のありとあらゆる罵詈雑言を書いた紙を「きさまだ!」と運転手に突きつけ、ネクタイを切られるという反撃に出られた運転手に対しポケットから膠のチューブを取り出し両目に吹きかけ顔の真ん中に怪傑ゾロのマークを描きカイロの停車場を騒然とさせるという。。。大変お行儀のいいジェントルマンでございます。

 

まあその、この老探偵の言動を読むだけでも本書を充分楽しめるのではないか、と^^;

 

内容は、エジプトの呪いと人間消失が二つ。雰囲気は満点なものの、長い割には迫力や派手さには大いに欠けるかなーと。呪いを呪いで終始させなかったのは本格ミステリとしては当然ながらもさすがかなーと。第一の消失にページを取り過ぎて、第二の消失を綺麗に魅せられなかった気がする。こっちのほうがはるかにインパクトもあったしドラマ的だったからね。

 

ま、古典ファンならぜひどうぞ。入門編としては訳が読みやすい以外にはお薦めする要素はありません。