すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

絵に描いた悪魔/To Fear a Painted Davil  (ねこ3.7匹)

ルース・レンデル著。角川文庫。

その夏、かつての荘園に造成された美しい住宅地、リンチェスターでは、雀蜂の異常発生をみていた。隣人たちを招いてのハロウズ荘の若い女主人タムシンの誕生パーティも、蜂の群れには悩まされた。だが、何よりも人々の度肝を抜いたのは、彼女の寝室に置かれた不気味なサロメの絵だった。それを見たときの彼女の夫、パトリックの怯えようも異常だった。パトリックは巣を取ろうとして蜂に刺され、梯子から落ち、その翌朝ベッドで冷たくなっていた。やがてタムシンをめぐって様々の噂が近隣に拡がりはじめたが…。(あらすじ引用)


<あねきありがとう企画・短期連載ルース・レンデル祭り>第一弾。


最近翻訳ものを敬遠していたためか、登場人物の名前を最後まで覚えきれず苦戦した。ルース・レンデルは3冊目の挑戦となり、作風が好みであることは確実。実は雰囲気だけで「おっさんもの」と心で呼んでいるシリーズものを後回しにしてしまったのだが^^;。

イギリスものらしく、人々の会話を中心に人間関係を紐解いて行く正統派ミステリである。女性の口が立ち、歯に衣着せない物言いと、男性の本音と建前がうまく事件の謎を隠蔽していて見事と言える。事件に関係なかろうと物語に無関係とは言えない閉塞感がまたイギリスミステリファン好みだろう。事件発生までのスローな展開と終盤からのたたみかけの激しさが読む者の気持ちを盛り立てる。多少ヒステリックなのが読者との温度差を生みかねないが、得てしてこういうものの真相、動機は「みっともない」ものなのだ。


(273P/読書所要時間2:30)