すべてが猫になる

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白銀ジャック  (ねこ3.7匹)

東野圭吾著。実業之日本社文庫。

ゲレンデの下に爆弾が埋まっている――
「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。年の瀬のスキー場に脅迫状が届いた。警察に通報できない状況を嘲笑うかのように繰り返される、山中でのトリッキーな身代金奪取。雪上を乗っ取った犯人の動機は金目当てか、それとも復讐か。すべての鍵は、一年前に血に染まった禁断のゲレンデにあり。今、犯人との命を賭けたレースが始まる。圧倒的な疾走感で読者を翻弄する、痛快サスペンス!(裏表紙引用)


東野圭吾、いきなりの文庫!」という帯に目を奪われ、まんまと乗せられて購入したのは私だけじゃあるまい。今は「堀北真希さん絶賛!」に変わっているらしいが。今月発売してすでに80万部超えだってさ。浦○さんとかこれ見て「やってらんねー」とか思うんだろか。

というわけで、お仲間さんにも本書を意識している方は多いと思うのだが、それなのに面白くもなんともない点数をつけて申し訳ない。だってこれどうしようもないよ。一定以上の面白さはあるけれど、期待以上のカタルシスはないんだから。圧倒的な疾走感で読者を翻弄はさすがに言い過ぎだよね。東野さんと言えば誰もが認める実力派ベテラン作家だけど、逆にどの作品もハズレなし、って言い切れるファンだって居ないだろうから「期待値が高まったゆえの評価」ってわけでもないと思うんだあ。


ストーリーは誰も誘拐されない、企業を狙った身代金強奪もの。人質はゲレンデのお客さんと従業員全て。なんだか織田裕二が出て来そうな設定の割に銃撃戦もないし迫力もない。警察には絶対通報出来ない立場の会社が、犯人の思うままに操られ現金を奪われ続けるのだが。やっぱ、ありがちだけど「人情のない刑事」「間抜けな警察」ってものは必要なのかもなあ、と思った。素人だけで犯人の先手を打とうとするものだから、どうしても何かが欠ける。数多い登場人物も、すべて犯人足り得る条件を満たしているのでポイントは外していないのだが。さらに、意外な犯人が人の同情を買う動機を告白してやり切れないまま終了、ってんでもない。やはりそこから少しひねりを加えていて、これを小手先で書いたのだとすれば東野圭吾は凄いぜと言わざるを得ないのかも。


(412P/読書所要時間3:00)