すべてが猫になる

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イキルキス  (ねこ4匹)

舞城王太郎著。講談社

荒々しく吹きすさぶ言葉たしはいつしか紙の上に優しく降り積もり小説となる。物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。表題作「イキルキス」他二編を収録。(紹介文引用)


怒涛の勢いで出版され続けているMaijo祭り、本書は8月発売の短編集。
みんな喜べ、舞城王太郎はやはり死んでいなかった。やっぱ文章って上手いだけじゃダメだし、センスがなきゃダメだし、愛がなきゃダメなのだ。だからどんなに世間が舞城節を真似しようとしても、よく似てるだけのコピーにしかならないのだろう。

本書には三編の中編が収録されているが、そのどれもが愛と暴力に満ち、それでいてどれもが全く違う別のお話になっている。
特に素晴らしかったのが表題作「イキルキス」で、これはかなり読み進めないとタイトルの意味がわからないのだ。同じクラスの中学生女子が原因不明で連続死を遂げるという突飛な作品なのだが、主人公であるヤリたい盛りの中二男子の妄想が独特の語り口でぽんぽんとテンポよく語られ、
最後には生きることの真実に到達する。
二編目の「鼻クソご飯」はなんじゃこのタイトルはと動揺するが、あくまでこの汚いものは作品で語ることすべての象徴でしかない。(作者が男性だというのはこれで確信出来たが^^;女子は子供でも食べません)一番わかりやすいヴァイオレンスもので、これもまた人生の指針が全く一般人の参考にはならない
主人公を使うことで見事に表現されている。
三編目の「パッキャラ魔道」はこれまた舞城さんらしい、ファミリーのごたごたを歪んだ若者目線で描いた愛の完成図。舞城節が一番冴えたのはやはりこれだろうか。


わずか200数ページ足らずの短篇集だが、一つ一つが印象深く濃い内容。舞城ファン受けは間違いなし。


(218P/読書所要時間2:00)