すべてが猫になる

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月と蟹  (ねこ3.7匹)

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道尾秀介著。文藝春秋

「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる―やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。
(あらすじ引用)


おっとゆきあやさんが本を読んでいる。
すっかり記事の書き方を忘れてしまいましたが頑張ろう。この道尾さんの新刊、もう誰か記事アップしてるのかな?^^


すっかりミッチーはミステリー色が薄くなって来たようで。
父を病気で亡くした少年と、家庭で虐待を受ける少年と、母を事故で亡くした少女。この3人のクラスメイトが、心に闇を抱えながら、放課後の遊びを通じて交流を深めながら、お互いの人生の背景が動いて行くという、テーマとしては道尾さんらしいもの。しかし、焦点はそれぞれの子供達の心の闇や、思わぬ接点から生じる柵などにあり、大きな事件は起こらないというある意味淡々とした内容。大人でもキツイのに、子供が親の不倫や身内同士の残酷な関係、そういう環境から心に棲み付いてしまう暗い何かを抱えながら生きて行く姿には心つまるものがある。これがとことんまで劣悪な環境とまではいえない、不運な誰かが背負って行かなければならない事柄であるからこそ物語になる。なぜ自分がという理不尽さを、若いうちから考えなければならないのは間違いなく不幸だ。

もしかしたら道尾ファンには不評かもしれない地味さではあるが、派手ではない、人間の心にある小さな何かをどんな作家よりも数多く伝えられるという一面を見せられた一作かもしれない。なんだか哀しくて
なんだか包容力さえ感じる作品。


(333P/読書所要時間3:00)