すべてが猫になる

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悪魔の涙/The Devil's Teardrop  (ねこ3.6匹)

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ジェフリー・ディーヴァー著。文春文庫。

世紀末の大晦日午前9時、ワシントンの地下鉄駅で乱射事件が発生。間もなく市長宛に2000万ドルを要求する脅迫状が届く。正午までに“市の身代金”を払わなければ、午後4時、午後8時、そして午前0時に無差別殺人を繰返すとある。手掛りは手書きの脅迫状だけ…FBIは筆跡鑑定の第一人者パーカー・キンケイドに出動を要請した。(裏表紙引用)


リンカーン・ライム以外のジェフリー・ディーヴァー長篇作品に初めて挑戦。ああ、もう、これ完全にジェフリー・ディーヴァーだね^^;捜査チーム側視点と犯人側視点が交差して、専門的捜査と明晰な頭脳を持って事件に対峙する二人の男女、めくるめくどんでん返し。犯人側に「悪魔の涙」という呼称がついているところまで、私の知っているディーヴァーの世界がすべてここにあった。

特徴は、主人公を担ったシングルファーザー・キンケイドが元FBI捜査官で、現在文書検査士ってところ。彼の技術が犯人の脅迫状を鑑定し、事件解決への重要な役割を果たす。これ、英語圏の読者ならもっと面白かったんだろうね。面白味と言えば、キンケイドが別れた妻から親権を奪われそうになっているという状況。問題のあった母親が更正したとはいえ、自分の一部となっている子供二人を取られるわけにはいかない。しかし、危険な仕事を請け負っていることが妻にばれたら圧倒的に不利になるわけで。少しマニュアルに頼りすぎてる感はあるけれど、いい父親なのになあ。がんばれ。

パートナーのマーガレット・ルーカスにもかなり辛い過去があって、キンケイドとの関係や事件に密接に関わり合って行く。ここで終わりかと思いきやのまさかの犯人の正体も、キンケイドの功労があってなかなかにドラマチックだ。


さて、ファンには楽しみのリンカーン・ライム友情出演。
電話のみの登場だったが、案外早いうちの登場に胸がときめく。ファンサービスありありの、サックスやトムの名前出演ありがとう(笑)。


良い作品だったが、これをちょっと変えるだけでリンカーン・ライムシリーズとして使えたのになあ、と残念だった。キャラクターでテンションが変わる読者だって居るのだ。言い訳すると、4日もかけて読んだので疲れた。面白い本は一気に読もう。

(566P/読書所要時間5:00)