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悪党たちは千里を走る  (ねこ3.7匹)

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貫井徳郎著。集英社文庫

しょぼい仕事で日々を暮らすお人好しの詐欺師コンビ、高杉と園部。ひょんなことから切れ者の美人同業者とチームを組むはめになり、三人で一世一代の大仕事に挑戦する。それは誰も傷つかない、とても人道的な犯罪計画だった。準備万端、すべての仕掛けは順調のはずだったが…次ぎから次ぎにどんでん返しが!息をつかせぬスピードとひねったプロット。ユーモア・ミステリの傑作長編。(裏表紙引用)


おおお、面白かった。
貫井さんに、こんなかる~いユーモアミステリ作品があったとわ。基本的に誘拐もの、ユーモアもの、悪者主役ものがスキではないので後回しにしていたのだけど、これならさっさと読んでいても良かったなあ。

メインキャストは3人。しょぼい詐欺師の高杉と、彼をアニキと呼び慕う抜け作園部。そして同じ詐欺師としてターゲットが被ってしまったことから手を組むことになった菜摘子。それぞれのキャラクターが個性豊かで好感度も高い。詐欺師に好感度もないもんだが、ちょっと抜けていて、ちょっと人情味があって、会話がユーモラスというところは誰しもが憎めない要素なんじゃないか。どんくさい園部もハラハラさせられるけど優しい男だし、菜摘子も美人でお高いけど自分なりの正義感を持っている。まあ、目新しいキャラクターとは言えない3人だけど、出て来るお金持ちの家族や悪役が適度に憎ったらしく描かれていてさらに味が出ている。その中でも印象的なのはお金持ちのご子息・巧くん。異常なほどの天才児で、高杉たち大人に対等以上の口をきく、端から見れば生意気なガキなんだけど、やっぱりどこか少年らしいところもあって、強がりなところが母性本能をくすぐるのだ。

ストーリー展開もテンポが良く、次々と予想外の出来事が起きるので飽きさせない。ユーモアミステリということで、クライマックスに緊迫感や意外性はないがまとまっていて良いと思う。貫井さんが苦手な人も、これから貫井さんを知りたいという人にも最適な1冊。かる~い気持ちで読みたい時にどうぞ。

(448P/読書所要時間3:30)