すべてが猫になる

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アンドロメダ病原体/The Andromeda Strain  (ねこ4匹)

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マイクル・クライトン著。ハヤカワ文庫。

アリゾナ州ピードモントは、無人衛星の着地後、瞬時に死の町と化した。現地で極秘裡に衛星の回収作業を行っていた回収班からの連絡も、やがてぷっつりと途絶えた。どうやら地球外病原体――それも恐るべき致死性を持つ病原体が侵入したらしい。ただちに最高の頭脳と最新鋭のコンピュータによる特別プロジェクトが発動されたが……。地球が直面した戦慄の五日間を徹底したドキュメンタリー・タッチで描く衝撃の話題作!(裏表紙引用)


完全なるジャケ買い、タイトル買い本。「ジュラシック・パーク」を描いた人だったのね、とか言っている間はまだ自分もSF初心者か。あげく家に帰って「SFハンドブック」を見たら本書が「編集者のおすすめ」の章にちゃっかり載っていた。

さてさて、本書は「ドキュメンタリー・タッチ」とある通り、まるで本当に起きた出来事のような体裁で描かれている。よって専門用語バリバリ、図表やデータの掲載が活発でこれぞSF好きが読むSF好きのためのSFである。ウイルス・パニックものだが科学的捜査の要素に力が入っている上、キャラクターも無個性かつ物語としても淡々としているためエンタメ的な「面白味」はほとんどないと言っていいと思う。
そのぶんSFガジェットてんこもり。オッドマン仮説などの専門的理論や科学技術のみならず、ここはちょっとサラッと読み流したら理解出来なくなるぞ、という記述が大半を占める。が、興味が湧けば素人に理解が追いつかないようなものではないと思う。

こう書くと、「うわ、こういうのアワネー」と思われそうだが、物語的な興奮がまったくなく、メッセージ性が全然内包されていないかというとそんなことはないのだ。二百万度の高熱に耐えられる生物はいないという理論のもと、非常事態発生時には核爆発を選択するプロジェクトチーム。生き残った赤ん坊と老人、全く共通点のない二人がなぜ生存しているのかの追究や仲間の感染危機など、結末に対する明るい欲求が喚起されることは間違いないし、感動やスリルはなくとも探究心や好奇心を刺激し続けてくれることは保証したい。何より、訳が読みやすいと思うよ。個人的な感触ではSF中級者以上向き。でもゆきあやみたいな背伸びしたい初心者でも読みたいと思った時点で読む資格あり。

(417P/読書所要時間3:00)