すべてが猫になる

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狩人は都を駆ける  (ねこ3.5匹)

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我孫子武丸著。文春文庫。

京都で探偵事務所を営む「私」のもとに久々にやってきた仕事の依頼は、なんと誘拐事件の解決。もっとも誘拐されたのは家で飼われていたドーベルマンで、つまりは犬の捜索が仕事なのだった……。苦手な動物がらみの依頼ばかり次々に舞い込む探偵の困惑と奮闘を描いた傑作ユーモア・ハードボイルド5篇を収録。(裏表紙引用)


我孫子さんのハードボイルド短編集。シリーズものになってるのかな?
「ボクちゃん探偵」とどう違うんだ、と思ったら、まあ探偵が大人で猫嫌い、ってところ。語り口がシンちゃんと同じなので1人でマニアックに面白がってしまった。

主人公は、京都で探偵事務所を開設するバツイチ独身青年。こういう作風の常道通りに、依頼人は少なく家計は火の車。友人である獣医の沢田にいつも依頼人を世話してもらうが、猫が苦手なのに猫に絡んだ事件ばかり請け負ってしまう。元々堅気の仕事に就いていた主人公なので、推理力や洞察力、それなりの人望があるのに説得力があっていいと思った。何より、猫嫌いなのに憎ったらしくないんだ、これが。

だが、ミステリ的には不満だらけと言わざるを得ない。
古いお仲間さんなら承知の事だと思うが、自分は新本格世代でありながら我孫子氏の作品とは相性が悪い。この人の作品で「当たり」だと思ったのは速水三きょうだいの「8の殺人」だけなのである。それでも、本格ミステリ作家としての技量は認めているから時々手を出すのだが。。
これ、「ゆるい」んじゃなくて「ダメダメ」と言って良くないか?という作品が2、3作あった。「ゆるい」ものは、「ゆるく」描いているのだからアリだと思っている。でも、我孫子さんは違うでしょう?せっかく似たようなジャンルで違うものを打ち出したのに、肝心の論理がシンちゃんと同じレベルって、切ない。切ないぞ。

(311P/読書所要時間2:30)