すべてが猫になる

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プロムナード  (ねこ3.9匹)

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道尾秀介著。ポプラ社

作家になるまでの道程から、昔好きだった女の子との話まで…。一篇一篇に驚きが詰まった、新感覚のエッセイ54篇に加え、17歳のときに初めて描いた絵本『緑色のうさぎの話』。19歳のときに初めて文字で綴った戯曲『誰かが出て行く』も特別に収録。(紹介文引用)


月の恋人」と同時期に発売された、道尾さんの初エッセイ。
道尾ファンのお仲間さんのカンが正しかったことがわかった。

あれを買うならこっちを買えば良かったーーーーーーーーーーー!!(><)


と、いうわけで。
あまり道尾さんのブログを読むこともない自分なので、道尾さんの人となりや趣味、執筆に対するポリシー云々が知れて良かったなあ、というエッセイだった。やはり物語力のある人はエッセイも面白いのだろうか?エッセイというものは自己満足に寄ったものだと思っていたが、読み手が向こう側に居る、ということをきちんと意識して、ここで笑いを取る、ここで考えてもらう、という目的がはっきりと伝わるそれでいてとても読みやすい”作品”に仕上がっていたと思う。

線香花火やアメンボなど、「月の恋人」とリンクしたネタが最初に披露されているので、両方読まれるのがオススメ。あと、道尾さんが若い頃描かれたという戯曲や絵本が掲載されているのが嬉しい。戯曲はなんていうことなかったが、この絵本が素晴らしかった。画才はまるでないし字もヘタすぎて読みづらいが、ストーリーテラーとしての才能がこの頃から身についていたんだなあ、と実感出来る。不覚にも、ほろりと泣いてしまった。この絵本のためだけでも、手元に置いておきたい本だなあと思った。文庫だと、また伝わり方が違うんじゃないかなあ。

年齢が自分とさほど変わらない作家さんなので、瞠目するような意見などはやはりなかったし、クリエイター、芸術家として考えればその中では変わった人でもないと思う。想像の範囲内の、とても素敵でとてもひねくれた、小説に対してだけはまぶしいぐらいの真摯な方だった。作品によっては色々茶々も入れるけどさ、この人のファンで良かったって今心から思うよ。

(276P/読書所要時間1:30)