すべてが猫になる

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フラッシュフォワード/Flashforward  (ねこ4.2匹)

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ロバート・J・ソウヤー著。ハヤカワ文庫。

全世界の人びとが自分の未来をかいま見たら、なにが起こるのか?2009年、ヨーロッパ素粒子研究所の科学者ロイドとテオは、ヒッグス粒子を発見すべく大規模な実験をおこなった。ところが、実験は失敗におわり、そのうえ、数十億の人びとの意識が数分間だけ21年後の未来に飛んでしまった!人びとは、自分が見た未来をもとに行動を起こすが、はたして未来は変更可能なのか……ソウヤーが時間テーマに大胆に挑戦する問題作。(裏表紙引用)


「SFハンドブック」より~ミステリファンにおすすめのSF~の章で紹介されていた作品。ドラマ化されているので有名作品のはず。自分はミステリファンであるが、本書を選んだ動機は↑の理由ではない。
SF気分なのにわざわざミステリを読みたいとは思わない。山荘と館と落ちる橋と奇人探偵あってこそのミステリである。SFとミステリ、ガジェットの楽しみ方は同じでも、スイッチは別のところにあるんだわさ。


まあ、今の御託は前フリ。

ヒッグス粒子だのニュートリノだのSF用語は普通に飛び交うが、エンタメ風なのでSF初心者でもさくさく読める。主人公は二人居て、どちらもヒッグス粒子を発見しノーベル賞を狙う科学者。年配のロイドは今回の<未来転移>で、現在の恋人とは違う女性と暮らしていることがわかる。一方の若者テオは、<未来転移>の2分間に自分の未来を見なかった。それが意味することはひとつ。テオは21年後、生きてはいないのである。この二人の異なった未来を挙げただけでも、「未来を変えたい」気持ちはわかるし、ロイドに至っては今の恋人との結婚をためらうことについて責めることは出来ない。全世界の人びとが、明るい未来を見た者が居る裏で夢が叶わない事を知る者も居たりと、それぞれに反応はさまざまだ。それでも、「もう一度、未来の自分のヴィジョンが見たい」という思いは全世界共通の願いだった。自分達の実験が原因だと発表し、世界を混乱に陥れたロイドとテオのふたりは、自分の未来と現在の選択に悩み苦しみながら、責任の重大さと原因の解明という大きな仕事を担う。。。


・・・面白すぎるわ!!!

テーマとしてはパラレル世界と「未来は変更可能なのか?」というところにあるが、議論としては初期条件の変化が時間に影響するというカオス理論や未来は不変であるという物理学の理論的基盤だのが俎上に載っていたりして、単純なパラレルものではないことがわかる。まあ、正直言うと何かが判明するのかと思って読んでいたわけで、そこがミステリ要素なのかと期待していた自分としては若干放置された感も。まあ、でも、だからこそ読みやすいわけで。テオを殺す犯人の謎、というところも、これをミステリと言われても困る、というぐらいのレベル。伏線、仕掛け、そういったものは行方不明(作者は仕掛けたつもりなんだろうけど)。これは悪口ではない。事実を書いただけ。

面白いよ、ってところでは文句なし。しかしミステリじゃないとも言いたくないし、ガチガチのSFでもないと思う。オススメする対象を絞らずに、ミステリ風味のSFでございます誰が読んでも楽しめますよ、って言いたいな。

(461P/読書所要時間3:30)