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ドランのキャデラック/Nightmares & Dreamscapes  (ねこ3.7匹)

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スティーヴン・キング著。文春文庫。

敵は厳重な警備下にいる。倒せるチャンスはただひとつ、自動車で移動している間だけ……。妻を殺された男が犯罪組織の大物に挑む復讐戦。完全防護のキャデラック相手に仕組んだ奇想天外な計略を描く表題作ほか、キング一流の恐怖の物語から意外な結末が待つアイデア・ストーリーまで、巨匠の多彩な才能を味わえる傑作短篇集。(裏表紙引用)


久々にキングの短篇集を。7編収録のホラー作品群は、色とりどりの恐怖と驚きに満ちている。扶桑社ミステリーの<スケルトン・クルー>ものでキングに嵌った身としては、どうも「こっち側」のキングは苦手なのだが。言うならアッチはB級お花畑ホラー、コッチは大人ホラー路線。それでもうだうだといつまで読んでも終わらない長編のほうなら好みだったりするからわからないものだ。

「ドランのキャデラック」
表題作&映画化作品だけあって、一番長く一番面白かった作品。妻をマフィアのボスに爆殺された男の復讐劇、ここまでは普通なのだが、その復讐方法が頗る変わっている。キャデラックを落とし穴に落とすって^^;;;;悲しみが深すぎてバカになったのかこのおっさん。というわけで最初は失笑ものだったこの作品も、ドランを罠に嵌めてから俄然恐ろしくなる。憎い相手とは言え、100%無感情で人は殺せないもんだな。

「争いが終わるとき」
頭のいい弟に振り回されて生きて来た兄が、弟の考案したある「モノ」とは。。
兄の手記で語られる作品で、冒頭から弟が亡くなっているのが衝撃的。奇想天外な行動を起こす弟とのエピソードがぶっ飛んでいて面白い。

「幼子よ、われに来たれ」
小学教師のミス・シドリーは、悪魔のような生徒たちに日々悩まされて来たが。。。
教師が壊れていくさまも怖いし、子供だからこそ残酷であることの真実も怖い。

「ナイト・フライヤー」
雑誌記者の男が編集者の指示で、メイン州で起きた不可解な殺人を調査し始めるが。。。
自分の本棚に、新潮文庫版の「ナイト・フライヤー」という本が眠っている。どうやら自分は大昔にコレを読んでいるらしい(おい)。
なんかこう、飛行機とか色々キングが扱いそうなネタ。1度読んでいるからか?話の筋の見当がついていた。

「ポプシー」
「ナイト・フライヤー」の続編だそうだ。え、どのあたりが?
少年の誘拐をもくろんでいた男が、少年の「ポプシー」という言葉に惑わされる。こういうホラーは大好きだ。ポプシーという人物?が謎のところも、誘拐する男の錯乱ぶりも。それだけに、ラストが物足りなかった。ジョー・ヒルのほうがこういうのはうまそう。

「丘の上の屋敷」
・・・に住んだ人々は決まって不幸になる、それも原因が不明という定番のお屋敷ホラー。スタンダードすぎるが好みであれば読める。

「チャタリー・ティース」
最後に盛り返した感じ。おもちゃの歯を手にした男が、ヒッチハイクしていた青年を乗せてしまうが。。
1度痛い目に遭っているだけに警戒していた男だが、案の定^^;暴走する車、隣にいる悪魔、呪われた歯。全てが怖い。一番怖いのは主人公の男って感じもするが。ラストは蛇足だったなー。綺麗にまとめて欲しいものと、想像の余地が欲しいものと、今回は全部逆だったかな。。


以上。どれもそれなりにまあまあ。個人的には表題作と「ポプシー」「チャタリー・ティース」がお気に入り。モダンホラーが好きな人なら向いているが、夏だしホラーできゃあきゃあ騒ぎたい、という人には多分不向き。それなりにじわじわと恐怖を文章で味わえるので、機会があればどうぞって感じで。キングファンとしては、表題作以外は必読だと思わない。

(333P/読書所要時間2:30)