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七日間の身代金  (ねこ3.4匹)

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岡嶋二人著。講談社文庫。

プロデビューを目指す若き音楽家カップルの千秋と要之介。ある日、富豪の後添いとなった友人から、弟と先妻の息子が一緒に誘拐されたと相談を受ける。身代金の受け渡し場所は、どこにも逃げ場のない湘南の小島。にわか探偵と化した二人は犯人を追うが…。誘拐と密室の二重の謎に挑む、傑作青春ミステリー。 (裏表紙引用)


岡嶋二人、めっちゃ普通。
まあ、同じ誘拐ものでも「99%の誘拐」と比べてネームバリューが低いわけで、予想通りと言えばその通りなのだが。死ぬほどの読みやすさと、テンポの良過ぎる展開、キャラクターの魅力で最後まで引っ張って行く作品だ。よって、出来は悪くない。

誘拐ものと言っても、中盤から殺害された被害者と行方不明になった人物、もろもろの背景から通常の誘拐ものの定石を辿らなくなる。言えば密室トリックものと言ってもいいぐらいで、事件の構造が明るみになってからは犯人当ての様相を呈して来るのだ。蓋のトリックや協力者?の存在がうまく事件を複雑にしており、登場人物の造形すら事態を混乱させる物語作りは見事。素人探偵コンビがアマチュア楽家で、
友達以上恋人未満という関係からどう進展して行くかというのも楽しみどころのひとつ。

こうやって考えると普通に楽しめる佳作なのだが。とりあえず、犯人が気持ち悪い。気軽に読むには適切な作品とは言え、多少のモゾモゾ感があることは否めない。気が向いたらって感じでどうぞ。

(319P/読書所要時間2:00)