すべてが猫になる

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ニューロマンサー/Neuromancer  (ねこ3.7匹)

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ウィリアム・ギブスン著。ハヤカワ文庫。

ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれてゆくが……新鋭が華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!(裏表紙引用)


最近SF熱が高まるゆきあや、「SFハンドブック」オールタイムベスト17位の作品に挑戦した。「サイバーパンクの金字塔」「サイバーパンク古典傑作」と名高い本作だが、SF初心者が読む本としては多分敷居が高い。別に自分はあのランキングを鵜呑みにして「面白い順」だと思っているわけではない。あまりにもこのジャンルが枝葉分かれている為どれが自分にとって「イケる」か「イケない」かがわからなすぎるのだ。とりあえずジャンルは多岐にわたっているようだし、読んでダメならダメで作家やジャンルで仕分けをしようという段取りの最中。予想だけど、自分は「イケない」方向のほうが圧倒的に少ないと思うんだよね。

だって、これが面白かったんだから。

タイトルのカッコ良さだけで入手した作品だが、文体が独特すぎて噂に聞いた世界そのもの。言語感覚を楽しむ作品で、<サイバースペース>や<ウィンターミュート>、<ジャックイン>など馴染みのないルビ使いがずらずら並ぶ。「千葉シティ」などという、日本人読者には嬉しい設定にテンションも高ぶる。
どうやら神経科学の最先端技術を持っているのが千葉らしい。主人公は電脳空間にてヨーロッパのあちこちに飛ぶのだが、東洋文化がかなり本書の特色を出す役割を担っている気がしてならない。なんとなく作者が中国とごっちゃになってる感もあるが。神経を傷付けられたハッカーの主人公が、修復を条件に電脳空間を飛び回る。硬質感、無生物感が涼しげではあるが、それなりに性欲を発散させ正義感を噴出させる場面もある。そのあたりが好きな要素でもあったし、それだけにラストのストイックさというか、クールさが意外だった。


さて。
ここまで書いておいてナンだが、はっきり言って自分は内容を半分も理解していない(どーん)。感覚を楽しんだだけと言っても過言ではない。
だが、巷で言ってるほど読みにくくはなかったし、苦痛でもなかったんだよ。再読しろって言われたら出来るもの。以前どこかのコメントに書いたけど、ミステリファンはSFファンに一番近いんじゃないかと思っている。こういうガジェットそのものを頭に取り込んで楽しむ、っていうのはミステリ読みが普段やっていること。この独特の文体も、古野まほろだのドグラマグラだの舞城王太郎だのの洗礼を受けているミステリ読みなら衝撃を受ける前にジャックイン出来るんじゃないかな。

(437P/読書所要時間3:30)