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ランゴリアーズ/Four Past Midnight I  (ねこ3.7匹)

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スティーヴン・キング著。文春文庫。

真夜中のジャンボ機ーー眠りから覚めた者たちを驚愕が襲う。たった11人を残し、他の乗客がみな消えているのだ。しかも眼下にあるはずの街まで……想像を絶する危機と戦う男女を描く表題作。盗作疑惑に追いつめられる作家の物語「秘密の窓、秘密の庭」。中篇集と称しながら、実は長編二本分の分量の作品を収録した贅沢な一冊。(裏表紙引用)


5日間この本にかかりきりだった。
久々のスティーヴン・キングは「Four Past Midnight」シリーズの第1弾。(実は2の「図書館警察」のほうを先に読んでいる)
それぞれ二編ずつの中編が収録されている。中編と言っても、「ランゴリアーズ」のほうは450ページもあるから長編並みである。1作ずつ、4巻組で出して欲しかった。重いんだってばよ。

さて、感想を。

「ランゴリアーズ」

ランゴリアーズとは何じゃらほい、と言ったら、なにやら巨大なボール型の、変な咀嚼音を出す妖怪のことらしい。しかし本作の主要な恐怖はそれではなく、飛行機の中で目覚めたら周りの人間が消えていた、というSFまがいのシチュエーション、そこから派生するパニックである。11人の乗客、という事でどうしても「11人いる!」を連想してしまうね。何が怖いかと言ったら、消えた乗客が身に着けていた時計や装飾品、財布のみならず、かつらやペースメーカー、手術ピンまで残されていたという点。体内の医療機器を残して消えているよ。。。。ぞぞ。でも、服は一緒に消えてるんだね。
登場人物は回送中のパイロット、夢見るヴァイオリン研究生、盲目の少女、銀行重役、ミステリ作家、薬物中毒者、泥酔者、英国大使とさまざま。特徴のない約2名は「赤シャツ」とか「禿げ頭」としか紹介されていない^^;;
例のごとく、パニックになって人を襲う者や果敢に立ち向かう者、状況を打破しようと頭脳を使う者とグループ分けされていく。特に弱者であるはずの盲目の少女がストーリーの鍵を握っている。果たして、彼らは無事元の世界へ戻れるのか。
なんとなく、ラストはホラーというよりSFっぽい。


「秘密の窓、秘密の庭」

「あんた、おれの小説を盗んだな」
ーーという刺激的な一行で幕を開ける作品。主人公はベストセラー作家、離婚したばかりで別荘に滞在中の出来事だった。。。そう、これは映画化が記憶に新しい「シークレット・ウィンドウ」ではないかーー!!どれに収録されてるんだろう?とずっと気になっていたのだが、まさかこことは(笑)。
少し「ミザリー」を彷彿とさせる作品。閉鎖的状況ではない点が違っているが、作家が追い詰められるという点では通じるものを感じる。盗作という身に覚えのない訴えにうんざりする主人公・モート。彼が描いた年月の方が早いのだから確固たる証拠があるのだが、狂人は聞き入れない。バックナンバーを探すために奔走するモートだが、飼い猫を無残に殺され、離婚した妻の家が何者かに放火され、あげくに。。。
理屈や正論が通用しない、何をするかわからない人間に狙われる恐怖を見事に描いている。
ラストに○○の逆転があり引き付けられるが、それほど斬新なものではない。が、十分に面白い作品だった。


以上。
好き順位は「秘密の窓、秘密の庭」>「サン・ドッグ」>「ランゴリアーズ」>「図書館警察」かな。
初期ほどではないが、どれも長すぎずパターン化せずで楽しめる。今となってはキングの作風をある程度理解した上で読むので、「はぁ?」みたいな展開にならない事を知っている、そういう信頼感があるな。

                              (716P/読書所要時間7:30)