すべてが猫になる

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ウォリス家の殺人/This is Your Death  (ねこ3.7匹)

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D・M・ディヴァイン著。創元推理文庫

人気作家ジョフリーの邸宅“ガーストン館”に招かれた幼馴染のモーリス。最近様子のおかしいジョフリーを心配する家族に懇願されての来訪だった。彼は兄ライオネルから半年にわたり脅迫を受けており、加えて自身の日記の出版計画が、館の複雑な人間関係に強い緊張をもたらしていた。そして憎み合う兄弟は、暴力の痕跡を残す部屋から忽然と姿を消した。英国本格の妙味溢れる佳品。(裏表紙引用)


ディヴァイン2冊目~^^。
「災厄の紳士」の方が”今まで読んだ事ない感”が強く好みではあったが、本書のスタンダード英国本格感もなかなかいい。あねき情報によると、ディヴァインはこのように3冊が3冊共作風に違いがあり、しかもどれも面白いらしい。シリーズものでもない。いいね、いいね^^。

さて、本書。
書いた通りのスタンダードなフーダニットミステリである。
本書は冒頭から登場人物1人1人の人格や過去、立場を丁寧に晒し、事件がなぜ起きたかを明確にしていく。ゆえに、肝心の事件がなかなか起こらない。しかし、本書のような”被害者の逆転”ものは、彼らの人間関係を把握して臨むからこそ面白いのだ。バークリーやマクロイもそうだが、古典にこのようなミステリ作家が存在していたならもっと早く知りたかった。あねきに便乗するが、自分がクリスティを別格としているのはこの点である。そして、さらにミステリとしてのクオリティを問われる伏線の巧みさやフェアプレイ、ミスリードまでも手抜かりないとあっては楽しめない方が嘘だ。読み手が伏線だと思い込んでいた部分がミスリードだとわかった時ほど爽快な騙され感はほかにない。伏線を回収すると犯人の人物造形があらわになるという手法も見事だ。

残りは「悪魔はすぐそこに」。早いうちの確保を予定している。

                              (327P/読書所要時間3:30)