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ポアロ登場/Poirot Investigates  (ねこ3.7匹)

1942年発行(原書)のクリスティ初の短編集はエルキュール・ポアロシリーズだった。全編ポアロもので纏められており、14編が収録されている。この頃はまだ数ある名作群のいずれも描かれていなかった。ピンと張った口髭、潔癖でお洒落、船が苦手で自意識過剰。そんなポアロの灰色の脳細胞は短編でも充分に発揮されている。おなじみヘイスティングスとの仲良しっぷりもピークの頃、彼を訪ねて来る依頼人は著名人ばかり。さて今日の名探偵はどんな事件に遭遇しただろうか。


『<西洋の星>盗難事件』
一編目を飾るにふさわしい、富豪と映画スターが所有するダイアモンド盗難事件。盲点をうまくついており、真相はなかなか人を喰ったもの。そしてヘイスティングスポアロにさんざん馬鹿にされ、大喧嘩で幕を閉じた(笑)。

『マースドン荘の悲劇』
マースドン荘で起きた変死事件。主人のマントラヴァースは破産寸前で、保険加入後自殺したのではないか。。。ポアロの仕掛ける心理ゲームが見どころだが、結局事件を解決させたのはそれではなかった。随分あっさりと口を割るんだね。

『安アパート事件』
異常に安いアパートを運良く借りたロビンソン夫妻。その価格には一体どんな理由が?
ポアロ、家宅侵入^^;国家問題を絡めて事件は暴かれる。こういうのの方がクリスティらしい。

『狩人荘の怪事件』
ポアロ、インフルエンザに倒れる!(笑)ポアロに一任されてヘイスティングスは単身狩人荘に乗り込むが。。電報で推理を伝えるポアロ。相変わらず電報でも態度がふてぶてしい^^;
1つの屋根の下だけの秘密だけに留まらないところが凄いねえ。

『百万ドル債券盗難事件』
債券を預かりオリンピア号に乗り込んだリッジウェイだが、ニューヨークへ入港する前に盗まれてしまった。。手間をかけた犯罪を紐解いて行くポアロ
「まったく、才能のある者は辛いよ!」

『エジプト墳墓の謎』
今回はツタンカーメンの呪いをモチーフに。ポアロヘイスティングスがエジプトへ捜査に乗り出す。
船酔い防止体操をしているポアロが笑える。。今回は命をはって悪人と対決。
「いまいましい砂、おぞましい海!おかげで口髭がヘナヘナだ!」(知らんがな^^;)

『グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件』
土曜日の夜、ポアロヘイスティングスはグランド・メトロポリタン・ホテルで食事をしていた。そしてラウンジで出会ったオパルセン夫人の宝石が盗難に遭い。。
地味だがなかなかに凝ったトリック。犯行を見抜くまでのポアロの観察眼に注目。
エルキュール・ポアロを騙すなんてことは不可能なんだ!」

『首相誘拐事件』
事件のスケールの大きさは1、2。イギリス首相デイヴィッド・マカダム暗殺未遂事件ののち起きた首相誘拐事件を任されたポアロは。。フランスに渡り、再び船酔いにもだえるポアロ^^;
「このエルキュール・ポアロの才能を計算に入れてなかったんだな!」

『ミスタ・ダウンハイムの失踪』
ダウンハイム・サモン銀行頭取の金融界の名士・ミスタ・ダウンハイムが自宅から失踪した。。
悪人と探偵の知能ゲーム。科学的・数学的に厳密な方法でアプローチする姿勢をアピールするポアロ
ジャップ警部と賭けをして、椅子から動かずに事件を解決すると誓ったのだが。。
「かわいそうに!だが、きみには才能がないんだから仕方がないな!」

『イタリア貴族殺害事件』
ポアロが懇意にしているドクタ・ホーカーの家にかかって来た電話は、「助けて、あいつらに殺される!」というフォスカティーニ伯爵の叫びだった。
様々な策略を巡らしていて、今回の犯人は手強い。彼の推理はいつも正しい。悔しそうなヘイスティングスの捨て台詞が悲しい^^;

『謎の遺言書』
ミス・ヴァイオレットが持ち込んだ依頼は、叔父の遺言書のありかについてのものだった。自分の頭脳で遺言書を見つけなければ遺産は入らないのだが。。
珍しく失敗しそうになるポアロの慌てっぷりが^^;;列車から飛び降りたぞおい^^;
「人の三倍も馬鹿だ!こんな灰色の脳細胞なんて、二度と自慢なんかしないからな!」

『ヴェールをかけた女』
ポアロの存在は、本当に世界中の犯罪者の恐怖の的になっているのだろうか?自意識過剰のポアロの面目躍如。またヘイスティングスの敗北が決まった。些細な手がかりを見のがさないポアロの慧眼には恐れ入った。

『消えた廃坑』
やり手の中国人商の遺体が発見された。彼がイギリスから持って来た書類を見つけなければいけない。
ジャップ警部と違って、ミラー警部とはそりが合わないポアロ。もう少し謙虚になれば^^;
エルキュール・ポアロと芝居なんかしたことを、さぞ悔やんだことだろうな!」

『チョコレートの箱』
ポアロの失敗談。ポアロが一度だけかいた大恥とは、ベルギーで起こった毒殺事件だった。色の違うチョコレートの箱。。狭心症の薬。。推理は順調に見えたが。。
失敗ではない気がする。犯人が自白しなければ辿り着いていた真相なんじゃないかな。


ふぅ(;^^A。
1話1話が短いので読むのはさくさくさくなんだけど、書くとなると大変。。一時間くらいかかった。
。。再読のはずなんだけど、記憶にあるお話が1つもなかった^^;わりと好きなほうの短編集だった気がするけど、今読むと少し物足りない感も。バラエティに富んだ内容、ポアロの愛くるしいキャラクター、味見としては飽きさせない良い作品集だな。

                             (389P/読書所要時間3:00)