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乱鴉の島  (ねこ3.8匹)

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有栖川有栖著。新潮文庫

犯罪心理学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。 (裏表紙引用)


待ちに待った「乱鴉の島」が遂に文庫化!2007年本格ミステリ・ベスト第1位作品で、お仲間さんでも読まれた方は多いはず。当時の書評ではかなり厳しい意見が目についていたのは記憶に新しい。

さて、期待せずに読むとかなり面白かった。元々有栖川さんの詩的な文章の引用や言い回しが好みに合う事もあるが、愛する火村助教授シリーズだとは知らなかったのでその喜びが大きい。アリスに誘われて「鳥島」へ骨休めに来たはずが、船頭への伝達が不十分で似た名前の「烏島」へ辿り着いてしまった火村さん(&アリス)。そこは見た目通りの孤島で、携帯電話は通じない、迎えの船は数日待たなければいけない、家はと言えば、高名な詩人海老原の別荘だけ。しかし、偶然にもその別荘には海老原ファンクラブと称する複数の男女やその甥や姪などの子供達が滞在していた。部外者として肩身の狭い思いをしながら滞在を許可された火村さん(&アリス)。さらに、ヘリコプターで乗り付けた青年起業家が登場するに至り、物語は凄惨な殺人事件へと発展する。。

火村さんの推理がかなり慎重に過ぎ、弱気なのか強気なのかわからない。部外者として四面楚歌になった火村さん(&アリス)と容疑者達の攻防が緊迫感を出していて楽しめる。ファンクラブ集いの真相や子供2人の存在理由、第一の被害者の行動などはなかなかに考え抜かれていて満足。が、残念だったのは、真犯人の正体のしょぼさ(笑)と、殺害動機。これは後付けだろう。。二時間サスペンス並みである。だが、なになにベスト1とかいう冠がなければ普通に評価された作品だったんだろうな、とは思える。個人的には、「有栖川さんベスト10」内にかろうじて入るだろう。

                             (494P/読書所要時間4:00)